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【速報】38,000名のエンゲージメント調査から見えた実態と、若年層の離職防止につなげる施策とは

昨今の多様な働き方の影響や、価値観の変化により、ますますエンゲージメント向上の取り組みが重要視されています。本レポートは約38,000名対象に実施したエンゲージメント診断「エンゲージメント21」の結果(2022年4月~2023年3月実施)を基に、若年層の離職防止の施策をご案内します。

*2023年6月15日に実施したウェビナー(【速報】38,000名のエンゲージメント調査から見えた実態と、若年層の離職防止につなげる施策とは)の一部をまとめたものです。

<登壇者情報>
株式会社ビジネスコンサルタント
ゼネラルマネジャー 藤井 包起

1.エンゲージメントとは

本題をご案内する前に「エンゲージメント」についてご紹介します。

エンゲージメントとは「企業理念やビジョンなど組織が目指しているものと、キャリアなど個人が目指しているものが重なった部分」のことです(図1)。

図1 エンゲージメントとは

この部分が魅力や一体感を組織の中に生みます。一言で言えば、エンゲージメントは「愛着心」とも表現されます。

エンゲージメントはパフォーマンスに影響する

エンゲージメントをテーマに各組織で、さまざまな取り組みを始めています。理由は、エンゲージメントの向上がパフォーマンスにつながると言われているからです。裏付けの一つに、アメリカのギャラップ社のエンゲージメント調査結果があります(図2)。

図2 エンゲージメント向上による効果
出典:「The Relationship Between Engagement at Work and Organizational Outcomes」
2020 Q12® Meta-Analysis: 10th Edition https://www.mandalidis.ch/coaching/2021/01/2020-employee-engagement-meta-analysis.pdfを参考に作成

エンゲージメントの高さが上位25%と下位25%の組織を比較したところ、上位25%の組織はパフォーマンスが高いという結果が出ました。さらに、営業の生産性が18%高く、収益性が23%高い。顧客ロイヤルティーも10%高く、離職率は43%も低かったのです。

価値観や働き方の多様により、離職率の高さや、定着率向上に関する相談をよく伺います。組織を持続的に運営する上で、社員のエンゲージメント向上は重要です。

また上場企業は2023年3月期決算から人的資本開示の義務化が決定されました。これに伴い、人的資本経営に関する取り組みも増えています。その一環として、エンゲージメント指標を可視化し、世の中に開示する動きが見られます。

エンゲージメント診断モデル

社員のエンゲージメントを高めるためには、エンゲージメントが高い状態について整理する必要があります。弊社の開発した診断「エンゲージメント21」は、七つの大きな項目と21の質問を使って、社員のエンゲージメント状態を可視化できます(図3)。

図3 エンゲージメント21モデル

図3を基に七つの項目をご紹介します。

①事業の将来性

事業の将来性に対するイメージを社員が持てているか。組織の成長と自己の成長がつながっていると感じられているか。

②仕事の意義・貢献

顧客、組織などに対して、現在または将来への貢献を実感・確信できているか。仕事自体に意義を感じることができているか。

③自己成長実感

現在の仕事を通じて成長を実感できているか。成長のための機会が組織内に豊富にあり、活用できると感じているか。

④上司の支援

上司が自分の努力や貢献を認めてくれている、自身の成長のために指摘や支援も積極的に行ってくれると感じているか。

⑤人間関係

職場の人々はお互いを気にかけているか。組織の中には心から信頼できる人がいるか。職場を越えて色々な人と関係を築けているか。

⑥多様な働き方

国籍、性、年齢、健康状況、家庭状況 介護や育児 などに対しても不安にならず、多様な働き方の選択肢を選ぶことができているか。

⑦処遇の公平感

努力や成果に見合った処遇がなされているか。一時的な不公平があったとしてもそれを是正できる可能性を感じているか。

約38,000名のエンゲージメントの実態

2022年4月1日から2023年3月31日までの期間で、90組織の37,651名のお客さまに実施したエンゲージメント21の調査概要と、三つの特徴についてご案内します。

エンゲージメント調査概要

以下の概要で調査を実施いたしました。

アンケート期間:2022年4月1日~2023年3月31日
回答組織数:90組織
回答数:37,651名

データの見方

エンゲージメント21は、1点~7点の尺度で回答をします(図4)。

図4 データ尺度

5点~7点は青色で示され、肯定的でエンゲージメントが高い認識となります。4点~4.5点の範囲は、黄色で示され、やや問題があるという認識となります。4点以下は赤色で示され、問題があるという認識となります。

次に調査結果の詳細をご案内します。まずは、今回調査した38,000名の全体の傾向についてご紹介します。エンゲージメント21バロメーターは、21項目の中で、エンゲージメントが高い項目がいくつあったかを示しています(図5)。

全体の傾向「困った時にサポートしてくれるという認識が高い」

図5 「エンゲージメント21」38,000名の全体傾向

図5の上段にある「3/21」は、「特に高いスコアだった項目は、21項目中での三つある」という結果を表しています。三つは以下の通りです。

  1. 支援関係(5.2点):困ったときに周りにいる人がサポートしてくれるという認識
  2. 貢献実感(5.1点):人の役に立っているという認識
  3. 信頼関係(5.1点):直属の上司を信頼しているという認識

弊社が提供している「エンゲージメント21」はお客さまに3年間サービス提供してきました。この期間、「支援関係」「貢献実感」「信頼関係」の三つの質問項目に対するスコアは、一貫して高い傾向を維持しています。

一方で、低いスコアをみると、①事業の将来性の項目の中の「将来キャリア(3.8点)」が全項目中、最も低いスコアとなっています。この結果から、キャリアを描けないという問題が浮き彫りになっています。

下位4項目は以下です。

  1. 将来キャリア(3.8点):将来キャリアに懸念があるという認識
  2. 福利厚生(4.1点):魅力的な福利厚生が提供されていないという認識
  3. 収入の妥当性(4.1点):働きに見合った収入が提供されていないという認識
  4. 処遇の妥当性(4.1点):能力に見合った昇進や昇格の評価が不足しているという認識

「将来キャリア」に否定的な認識

全体の特徴的な傾向を三つご案内します(図6)。

図6 38,000名データのまとめ

特徴的な傾向の一つ目は「将来キャリア」の項目です。診断結果で3.8点と最も低く、今回の回答者の多くが将来キャリアに懸念を持っていると考えられます。組織の成長と、自分自身の成長がつながっていないと認識している可能性があります。

二つ目に「エンゲージメントに関しては、2021年度と比べて、エンゲージメントは若干向上」しています。特に働きやすさの項目が改善しています。しかし、 テレワークの影響で孤立し「将来性」や「相談相手」のスコアは伸びていません。

三つ目は「エンゲージメントの向上の鍵は、上司との関係」という傾向です。上司との関わりを変えていくことが、一つのポイントになります。

3.若年層のエンゲージメントの実態

ここからは25歳未満、25歳以上30歳未満の若年層に焦点を当て、エンゲージメントの実態、エンゲージメントを高めるポイントをご案内していきます。

25歳未満|全体平均と比較してもスコアは高いが、将来キャリアに関する懸念あり

まずは、25歳未満、大卒で入社している方であれば入社3年目あたりの方までのスコアです(図7)。

図7 25歳未満のエンゲージメントスコア

全体平均と比較しても0.21点高く、エンゲージメントが高い結果でした。その中でも特に「支援関係」の項目が高く出ました。25歳未満は周囲からのサポートがあり、上司への信頼が厚い、そして福利厚生に関しても満足していると言えます。

しかし、「将来キャリア」「貢献実感」「好きな仕事」「強みの発揮」の項目が低いことから、ワークエンゲージメントに関しては懸念が払しょくできずに3年間過ごしていると言えます。「強みの発揮」の項目が特に低いことから、自分自身が仕事の中で強みを発揮している実感がなく、できないことが多いと感じています。

次に「好きな仕事」の項目です。今の仕事が好きではなく、何かの原因で、仕事が単調な流れ作業のように感じられている可能性があります。

そして「将来キャリア」の項目です。入社したばかりで、先が見えない状況に不安を感じていると言えます。仕事もつまらないと感じている可能性があります。しかし「支援関係」の項目はスコアが高いので周りのサポートは手厚いという結果です。

上司の関心がエンゲージメントを高めるポイント

調査結果を踏まえ、25歳未満の方々のエンゲージメントを高めるポイントをご紹介します(図8)。

図8 25歳未満のエンゲージメントを高めるポイント

エンゲージメントを高めるポイントとなる項目は三つあります。

一つ目は「支援関係」です。全体結果でも高い傾向でした。この世代でエンゲージメントが高い方は周囲からのバックアップがあり、困った時に助けてもらえる関係があると言えます。

二つ目に「好きな仕事」の項目です。平均値も低いですが、自分自身の仕事の意義、仕事の目的、自分の強みを発揮できていることがポイントになります。

三つ目は「対話」の項目です。上司がしっかりと自分の話を聞いてくれている、あるいは関心を持ってくれる、ということがポイントになります。

25歳以上30歳未満|25歳未満と比較するとエンゲージメントスコアが低下

次に25歳以上30歳未満のエンゲージメントの実態をご紹介します(図9)。

図9 25歳以上30歳未満のエンゲージメントスコア

全体平均と大きな差は見られませんが、25歳未満と比較するとエンゲージメントスコアが低下しています。若手の頃は仕事に対する不安があり、年齢が上がってもワークエンゲージメントに関する懸念は解消されず、逆に深刻化しています。

また、組織とのつながり、絆に関しても懸念が広がっています。「自分の業務は頑張っているが、会社の理念には共感できない」という感情や将来への不安が、会社に対するネガティブな印象を強めている可能性があります。このような状況は、仕事や組織に対するエンゲージメントの低下を招き、組織を離れようとする意識につながりやすくなります。

また、収入が自分の働きに相応しくないと感じた場合、ますますエンゲージメントが下がります。このような状態が続くと、離職の可能性も高まると言えるでしょう。

上司との対話や信頼関係がポイント

調査結果を踏まえ、25歳以上30歳未満の層におけるエンゲージメントを高めるポイントを解説します(図10)。

図10 25歳以上30歳未満のエンゲージメントを高めるポイント

25歳から30歳未満のエンゲージメントを高める一つ目の項目は「対話」です。上司が部下の不安を聞くと、エンゲージメントが高くなります。しかし、その反対の場合、エンゲージメントが下がる可能性があるため、上司との対話の影響が大きいと言えます。

それは「信頼関係」の項目にも関連します。特に、上司は生き生きしている人は目に留まりますが、そうではない人には注意が行き届いていない場合があります。このような状態が続くと、エンゲージメントが高い人と、低い人の差が出てくる可能性があります。

4.年代別エンゲージメントを高めるポイント

次に年代ごとのエンゲージメントを高めるポイントをご紹介します。

30歳以上45歳未満

30歳未満は既に触れたため、ここでは30歳以上についてご紹介します(図11)。

図11 25歳未満~45歳未満のエンゲージメントを高めるポイント

30歳以上35歳未満は「フィードバック」が特に重要です。仕事ができて当たり前になってくる時期ですが、周囲から感謝されている実感が大切になります。

35歳以上から45歳未満は、中核になる年代で、管理職に就くことも多いです。仕事の難易度も高く多忙になるため上司からの支援や期待がとても重要です。

45歳以上~65歳以上

45歳以上へのポイントも確認していきましょう(図12)。

図12 45歳以上~65歳以上のエンゲージメントを高めるポイント

45歳以上50歳未満の年代では、「評価の納得性」がポイントです。「信頼関係」「対話」もポイントになりますが、「評価の納得性」の項目は45歳未満では上位3項目に出現しなかった項目です。責任ある役割を担う年代だからこそ、評価の正確さや公正さが特に重要になります。

50歳以上65歳未満の年代では、上司との関わり方が全体的に大きな影響を与えます。経験を積んだベテラン層では、上司に自分の仕事を認識してもらえるかが、エンゲージメント向上につながります。また、自分に対する期待を伝えてくれているかどうかが重要です。

65歳以上の年代では、上司との対話に加え、会社の理念への共感、定年後の人事評価が適切であるかがポイントです。

結論として、各年代で重要視する項目は異なるものの、上司との関わり方がどの年代でも大きな影響力を持っています。

5.エンゲージメントを高める処方箋

これまで年代別の実態とエンゲージメントを高めるポイントをご紹介してきました。次に個人のエンゲージメントを高める処方箋をご紹介したいと思います(図13)。

四つの処方箋

図13 エンゲージメント21 四つの切り口

エンゲージメント21では、人事制度施策、ライン(上司)活動、人材開発施策、本人施策の四つの切り口からお客さまを支援し、エンゲージメントを高める取り組みを行っていきます。

これらの切り口を活用し、診断のデータを生かして改善施策を実行していくことが、エンゲージメント21の取り組みの要点です。

トータルエンゲージメント向上の取り組み展開例

エンゲージメント向上の取り組みについて、全体像をRPDCAのサイクルに沿ってご説明します(図14)。

図14 トータルエンゲージメント向上の取り組み展開例

R(リサーチ)P(プラン)(図14左)

診断を行う目的やスケジュール、実施方法などを決めます。 
ミーティングを通じて、診断の意義や何を達成したいのかについて話し合い、調査の進行方法を決定します。

D(ドゥー)(図14中央)

R(リサーチ)で全社のデータが得られた後に、役員や幹部はデータを活用して組織全体の施策を考えます。例えば、制度の改善、特定の職場やプロジェクトへの関わり方の改善、それぞれの階層に対するプログラムなどです。

C(チェック)A(アクト)(図14右)

エンゲージメントを高めるプロセスは時間がかかります。経年変化を確認し、プランの効果を評価することが重要です。単にデータを取るだけでなく、データを活用し、継続的な改善を行うことが成功の鍵です。

6.まとめ

エンゲージメントの向上は容易なことではなく、3年から4年程度の時間をかけて経年変化をモニタリングする必要があります。データを取り続け、それに基づいて組織を改善する姿勢が、組織全体のエンゲージメントを高めるために不可欠です。本レポートでも組織内で改善できるポイントをご紹介させていただきました。ぜひ貴組織のエンゲージメント向上の参考にしていただけますと幸いです。

レポート作成:株式会社ビジネスコンサルタント 情報提供サイト事務局

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