リーダーとは？求められる理由、役割、必要スキルや育成方法を解説！

変化の激しい、昨今のビジネス環境の中で、企業が持続的な成長を遂げるためには、優れたリーダーの存在が不可欠です。しかし、日本企業においては、経営リーダーの育成が戦略的に行われていないことで、多くの課題を抱えていることが浮き彫りになっています。本記事では、経営リーダーとして、リーダーの役割やリーダーに向いている人の特徴、効果的な育成方法についても具体的に解説します。

１．リーダーとは

リーダーとは指導者、先導者といった意味を持ち、リーダーシップを発揮し、目標達成に向けて、組織やチーム、人々を動かす人物を指します。リーダーは、与えられた状況の下で特定目標や課題達成のために、個人または集団の活動に影響を与え、導きます。

マネジャーとリーダーの違い

リーダーとマネジャーはしばしば混同されがちですが、その役割と求められる資質には明確な違いがあります。

マネジャーは、組織の日常的な運営や業務の効率化を担い、計画の実行や資源の管理をする存在です。マネジャーの役割は、既存のプロセスを維持し、安定的な成果を確保することです。マネジャーは時間や資源を最も効果的に使うことを重視します。

一方、リーダーは方向性を示し導く存在です。組織の未来を見据え、ビジョンを示し、変革を推進する役割を果たします。彼らは組織やチームにインスピレーションを与え、メンバーのポテンシャルを引き出しながら、目標達成に向けて導いていきます。

また、リーダーは、理想的な方向へ組織やチームを導き、全ての問題を１人で解決するように見なされがちですが、それでは、組織の持続的な成長にはつながりません。

リーダーが描くビジョンを現実に実行するためには、マネジメント能力が求められます。リーダーは、リーダーシップとマネジメントを相互に活用し、発揮、実践することで、組織は変化に対応し、安定した成長を遂げることができるのです。

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日本企業でリーダーが求められる理由

現代のビジネス環境は、急速な技術革新やグローバル化によって、かつてないほど複雑化しています。また、IMD※１による世界各国の競争力評価で、1990年に1位となった日本ですが、その後のバブル崩壊と共に転落し、2024年には36位になっています。このような背景から今後、日本企業が競争力を維持し、持続的な成長を遂げるためには、強力なリーダーの存在が必要といえます。
※１　IMD（国際経営開発研究所：International Institute for Management Development）

２．経営リーダー育成の実態

経済産業省の「経営人材育成」に関する調査結果報告書」によると、日本企業の多くが経営リーダー人材の育成に対して不安を抱いており、その背景にはデジタル技術の導入や国際的な視点を持つ人材の不足が挙げられます。この報告書では、経営人材候補の育成を目的とした何らかの取り組みをしている企業の約52.9％が「経営リーダー人材の育成に対して十分な戦略を持っておらず不安」と回答しています(図１)。

このように、日本においては、経営リーダー人材の育成が十分に進んでいない現状が課題として浮き彫りになっています。

こうした背景を踏まえると、日本企業が持続可能な成長を実現するためには、経営リーダーとしての強力なリーダーの育成が急務といえるでしょう。

３．リーダーに求められる4つの役割

現代のビジネス環境において、リーダーには多くの役割が求められます。その中でも一般的に重要と言われるのは、次の４つの役割です。これらの役割は、リーダーが組織の持続可能な成長と成功を確保するために不可欠な要素です。

①ビジョンを示し、目標を達成する

１つ目は、組織の未来を描くビジョンを示し、実現するための具体的な目標を設定する役割です。ビジョンは組織の方向性を定める羅針盤であり、リーダーはそのビジョンを社員に共有し、共通の目標に向かって努力する環境をつくり出します。また、戦略を立案し、その目標を達成するために必要なリソースを効果的に配分することで、企業の持続的な成長を実現します。

②組織やチームを指揮し、生産性を高める

２つ目は、チームを効果的に指揮し、組織全体の生産性を高める役割です。リーダーは、チームメンバーの強みを最大限に引き出し、協力を促進することで、組織やチームが一丸となって目標を達成するよう導きます。また、リーダーは適切な意思決定を行い、メンバーに明確な指示を与えることで、業務プロセスの効率化を図り、生産性を向上させることができます。

③メンバーをモチベートし、育成する

３つ目は、チームメンバーをモチベートし、成長を促進する役割です。リーダーは、メンバーが自らの能力を最大限に発揮できるように環境を整え、個々の強みを伸ばすためのサポートを提供します。また、リーダーは、メンバーの努力を認め、適切なフィードバックを与えることで、彼らのモチベーションを高め、組織全体のパフォーマンスを向上させることができます。

④模範的姿勢を示し、規範をつくる

4つ目は、組織の価値観や文化を体現する模範的な姿勢を示す役割です。このような姿勢によって、組織の規範はつくられます。また、リーダーは、自らの行動を通じて、高い倫理基準とプロフェッショナリズムを示すことで、他のメンバーの行動変容を促します。リーダー自らが実践し、示すことで組織内に健全な文化が根付くと同時に、全員が共通の価値観を持ち、同じ方向性で活動する環境が整います。

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４．リーダーに向いている人の特徴

では、どのような人がリーダーに向いているのでしょうか。ここでは、一般的にリーダーに向いている人の特徴を6つご紹介します。

優れたコミュニケーション能力がある

リーダーにとって、社員と円滑にコミュニケーションを取ることが不可欠です。意見を聞くことはもちろん、明確で分かりやすい指示を出し、問題解決にも積極的に関与します。また、信頼関係を築き、メンバーを動かす原動力となります。これにより、組織やチームのパフォーマンス向上につながります。

判断力と信頼性があり、誠実さを持つ

リーダーは多くの場面で判断を迫られることが多いため、即座に意思決定を下し、結果に対して責任を持つ姿勢が重要です。誠実に業務に取り組み、社員に公平に接するリーダーは、組織から信頼を得て、リーダーシップを発揮しやすくなります。また判断力のあるリーダーは、失敗を恐れず物事を素早く判断するため、ビジネスチャンスを逃しません。これにより、目標に向かう組織やチームの士気も高めることができます。

行動力があり、粘り強さを持つ

リーダーは、単に計画を立てるだけでなく、自ら率先して行動する力が求められます。さらに、困難な状況でも諦めずに粘り強く取り組む姿勢が、社員に勇気を与え、目標達成への道筋を示します。行動力のあるリーダーは、組織の士気を高め、困難を乗り越えようとする意欲を引き出すことができます。

視野が広く、周囲へ配慮する

変化に柔軟に対応するためには、自分の組織やチームの状況だけでなく、組織全体や業界の動向にも目を向け、視野を広く持つことが求められます。また、組織内外の社員の感情やニーズに気を配り、適切なサポートを行うことで、円滑な運営を実現します。

目標達成に取り組み、達成を目指す

リーダーの使命は組織やチームを導き、目標を達成することです。そのためには、達成に向けた具体的なプランを策定し、全体を鼓舞し続ける姿勢が大切です。リーダー自身が目標に対して情熱を持ち続けることで、社員もその姿に共鳴し、全力でサポートします。結果として、全体の一体感が高まり、成功への道が開けます。

メンバーの能力を引き出す

社員やメンバー一人一人の強みを最大限に引き出すことができる能力が、リーダーには必要です。個々人が自信を持って仕事に取り組めるように、それぞれのスキルや能力に合わせた指導やサポートを行い、その仕組みをつくることで、社員の能力が最大限に発揮され、全体のパフォーマンスが向上します。リーダーは、社員やメンバーの成長を支える存在であり、次のリーダーを育てていくことは、組織の持続的な成長につながります。

５．優れたリーダーに共通する特徴

優れたリーダーは、組織を成功に導くために重要な役割を果たします。そして、優れたリーダーには、共通する特徴※があります。ここでは、4つの共通する特徴をご紹介します。

ビジョンによって結束力を高める

組織全体を1つのビジョンに向けて結束させる能力を持っています。リーダーは、明確で実現可能なビジョンを提示し、共有することで、メンバーの士気を高め、共通の目標に向かって努力する環境を整えます。この結束力は、組織が困難に直面したときでも一丸となって乗り越える力となります。ビジョンによる結束力は、組織が長期的な成功を収めるための原動力となります。

コミュニケーションによって説得する

効果的なコミュニケーション能力を持つリーダーは、メンバーを説得し導く力を備えています。そして、明確で透明性のあるコミュニケーションを通じて、メンバーが目標を理解し、その達成に向けて積極的に行動できるようにします。また、リーダーはフィードバックを効果的に活用し、メンバーの改善点を明確に伝えることで、個々の成長を促します。説得力のあるコミュニケーションは、メンバーとの信頼関係を築く鍵となります。

方向付けによって信頼を獲得する

組織の方向性を示し、戦略的な判断を下すことができるリーダーは、組織全体が一貫した方向に進むように導きます。リーダーの判断が明確であり、かつ適切である場合、メンバーは安心してその指示に従うことができます。これにより、リーダーはメンバーからの信頼を獲得し、組織全体の一体感を高めることができます。信頼は、リーダーシップの基盤となり、組織の安定と成長を支える重要な要素です。

自分自身を管理している

自分自身を効果的に管理する能力があるリーダーは、時間管理やストレス管理に優れ、バランスの取れた生活を維持することで、リーダーとしての役割を全うします。また、リーダー自身が成長し続ける姿勢は、メンバーにとって模範となります。リーダーの自己管理能力は、持続的に高いパフォーマンスを発揮し、組織を成功に導くために不可欠な要素です。

※参考　ウォーレン・ベニス、バード・ナナス『本物のリーダーとは何か』（1987年）新潮社

公開講座ELP®の紹介とご参加者の声｜和幸モトーレン公開講座「ELP® 」ではリーダーに必要な考え方や理論を習得し、組織を成功に導くための力を形成します。BMW Japanの設立から間もない1989年に、地元埼玉のBMW正規ディーラーとして誕生した和幸モトーレン。「すべてをお任せいただける安心感をお客様に」という思いの下、地域に密着して経営をしています。代表取締役社長の山田様に、ELPに参加した狙いとご感想を伺いました。...

６．リーダーに必要なスキル

リーダーとして成功するためには、必要なスキルを身に付ける必要があります。リーダーとして、組織を効果的に導き、メンバーの潜在能力を引き出すためは、必要不可欠です。以下に、一般的に重要とされる6つの主要なスキルを挙げます。

戦略的思考力

戦略的思考力とは、複雑な経営環境や市場動向を的確に分析し、適切な戦略を策定する能力を指します。リーダーは、短期的な利益だけでなく、長期的な成長を見据えた戦略を構築し、リソースを最適に配分する必要があります。このスキルは、企業が変化する市場で競争力を維持し続けるための基盤であり、リーダーが持続的に成功するために不可欠です。また、戦略的思考力は、組織全体に浸透させるべきビジョンを明確にし、それに基づいた行動計画を策定する力でもあります。

変革推進力

経営環境が急速に変化する中で、企業が持続的な成長を遂げるためには、リーダーが率先して変革を推進する必要があります。これには、組織の既存の業務プロセスや文化を見直し、必要に応じて刷新することも含まれます。リーダーは、新たな市場機会を見つけ出し、組織をその方向に導く役割を担います。変革推進力は、リーダーが変化に対する抵抗を乗り越え、メンバーを納得させ、協力を得るためのコミュニケーション能力とも密接に関連しています。この能力があることで、リーダーは組織全体を動かし、革新的なアイデアを実現することができます。

高度なコミュニケーション能力

リーダーは、組織のビジョンや戦略を明確に伝えることで、メンバー全員の理解と共感を得る必要があります。また、社内外のステークホルダーとの信頼関係を築くことも、リーダーシップの重要な要素です。コミュニケーション能力は、単に情報を伝えるだけでなく、相手の意見を尊重し、共通の目標に向けて協力を促します。このようなコミュミニケーション能力は、組織の問題を早期に把握し、適切な対応策を講じるために重要です。また、組織内の一体感を高め、メンバーの自発的な行動を促す上でも必要な能力です。

レジリエンス（回復力）

レジリエンスとは「回復力」を表す言葉で、困難な状況に直面したときに乗り越え回復する力です。リーダーは、企業が予期せぬトラブルや経済的な変動に見舞われたときでも冷静に対応し、組織を迅速に立て直す役割を担います。レジリエンスが高いリーダーは、逆境においても前向きに行動し、組織を再び成長軌道に乗せるようけん引します。また、失敗から学び、さらに強くなるための成長機会と捉える視点を持っています。レジリエンスは、リーダーが困難な状況でもやり遂げる力であり、どのような困難な状況でも、柔軟に対応し、乗り越えていくために必要な能力です。

社員の育成と動機づけ能力

リーダーは、自分自身の成功だけでなく、組織全体の成長を促進するために他者を育成し、動機づける能力が求められます。このスキルは、リーダーがメンバーの才能を見極め、彼らの成長を支援し、組織全体のパフォーマンスを向上させるために不可欠です。リーダーは、メンバーが自分の能力を最大限に発揮できるように指導し、モチベーションを高め維持する環境を整えます。また、目標を共有し、社員が目標を達成するために自発的な行動を促します。

倫理的判断力

リーダーは、経営において常に高い倫理基準を維持し、透明性のある意思決定を行うことが求められます。倫理的判断力は、企業の信頼性を高め、ステークホルダーとの良好な関係を築くために重要です。そして、リーダーが倫理的な行動を示すことで、組織全体に健全な文化が浸透し、長期的にみて企業価値の向上につながります。また、倫理的判断力は、リーダーが困難な状況やジレンマに直面した際にも、組織の利益と社会的責任をバランスよく考慮した意思決定を行うための基盤となります。この能力を持つリーダーは、組織の信頼を築き上げ、持続可能な成長を推進することができます。

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７．リーダー育成を実施する際の流れ

リーダー育成プログラムを設計し、効果的に実施するための流れを解説します。リーダー育成を戦略的に進めるためには、明確なプロセスを構築し、体系的に実施することです。現場リーダーから経営リーダー人材の要件の明確化や、早期選抜と育成、挑戦機会の提供、評価や処遇制度の見直し、人材ポートフォリオの最適化、トップマネジメントの関与、そして長期的視点の強化が重要です。

リーダー人材の要件を明確にする

リーダー育成を効果的に進めるためには、まず、組織の経営戦略に基づいてリーダー人材の要件を定義することが重要です。リーダーが持つべき能力や特性を具体的に示し、将来の経営人材に期待される役割や責任を明確にします。これらの要件を基に、グローバル競争に対応できる能力や、戦略的思考、変革推進力、コミュニケーション能力といったスキルと育成プログラムの方向性を決定します。

自社の人材傾向を明らかにする

自社の人材の現状を把握し、育成が必要な候補者を特定するための基礎データを収集します。ここでは、現在の経営層の強みや弱み、候補者の潜在能力を評価することが求められます。人材アセスメントや360度評価を活用し、個々のリーダーシップスタイルや能力を詳細に分析することで、候補者人材の傾向を示します。

育成が必要な人材群を特定する

候補者に基づき、育成が必要な人材群を特定します。変化の激しい今日では、設定した要件が今後の変化に対応できる人材要件とは限りません。人材群として、幅広く人材を確保する必要があります。また、特定した人材に対しては、個別の育成プランを策定し、個々のニーズやキャリアの指向性に応じて学びの機会を提供することが重要です。また、ポテンシャルの高い人材を早い段階で見極め、計画的に育成を進めることも必要でしょう。

研修の計画と評価、見直しを図る

育成プランの策定後、その実行段階として研修プログラムを計画し、定期的に効果を評価します。人材要件に基づき、リーダー人材に求められるスキルを向上させるための研修内容を設計し、成果に基づいて見直しを行うことで、プログラムの有効性を保つことが重要です。研修の継続的な見直しは、変化するビジネス環境に適応できる人材の育成を実現します。

挑戦的なジョブアサイン

最後に、リーダー候補者に実践的な経験を提供するためには、挑戦的なジョブアサインが必要不可欠です。これは、リーダー候補者が新しいスキルを実際の業務で試すことで、リーダーシップを磨く機会となります。具体的には、重要なプロジェクトや海外赴任、リーダーが経験すべき難しい仕事などの多様な経験が得られる機会です。これにより、リーダー候補者は、現場での課題解決力を高め、将来の経営リーダーとしての基盤を築くことができます。

８．まとめ

リーダーは、複雑な現代ビジネス環境で企業の持続的な成長を支える重要な存在です。日本企業がグローバル競争に勝ち抜くためには、経営を担う人材の育成が急務と言えるでしょう。そのためには、求められる要件を明確にし、育成計画と挑戦的な仕事へのアサインメントが不可欠です。育成方法を検討する際には、本記事で紹介した優秀なリーダーに共通する必要なスキルなどを参考にしていただければ幸いです。

レポート作成：㈱ビジネスコンサルタント　情報サイト事務局