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新入行員研修オンライン化事例|伊予銀行

いつでも・どこでも つながり学びあう 若手世代のための新しい学習の場づくり

愛媛県を中心に13都府県149か店と、地方銀行第1位の広域店舗ネットワークを持つ伊予銀行様では、2018年度の中期経営計画から「DHD Bank」というキーワードの下、積極的にDXを推進されていました。人財育成においては「自律的に学ぶ環境の整備」の実現に向けて、まずは2021年度の新入行員研修をオンラインとオフライン、プラットフォームの融合で実施されました。


日々の活動の振り返りや成長記録を共有し学びあうオンライン日報、対面で会えない中でも同期同士の絆づくりのきっかけを作る自己紹介動画の提出、個々人のペースに合わせた学びが可能な学習コンテンツの配信などを通して「今の若手世代が快適・効果的に学べる環境」の基礎づくりを実現しました。

「学び方」にまつわる固定観念の打破

伊予銀行様は2018年からの中期経営計画として全行的に「Digital-Human-Digital Bank」(Digitalを活用し、Humanによる温かみのある対応でCX(顧客体験価値)の向上につなげる)という構想を掲げ、推進されています。人財育成においては「行員が自律的に学ぶ環境の整備」(オンライン研修の充実など)がひとつのテーマになっていました。

伊予銀行様の2018年からの中期経営計画の図

当時、人事部課長(研修担当)だった岡田様は、行員の新たな学習環境を模索する中で、今思えば固定観念に縛られていた時期があったとおっしゃっています。伊予銀行様の教育環境の特徴として、自行専用の研修所があり研修専任の担当者も3人いるなど施設面・組織面で比較的充実しており、「人財育成に過剰投資はない」という銀行の伝統的な理念の下、投資を惜しまず集合研修をすることができたという好条件がありました。

しかし、これがかえって「人財育成の最善の手段は集合研修である」という固定観念につながる要因になっていました。そして、コロナ禍によって地域間の移動制限がされることも増え、広範な地域に渡る店舗から受講生を集合させることができなくなったことで、研修実施の際の大きな支障になっていきました。

さらに、岡田様個人の感覚としても「人財育成といえば自行の研修所で・高度な内容は紙のテキストで、つまり自分が今までしてきた方法で学習すべきであると無意識に考えていた。また、自身の業務が集合研修の担当である以上、それをしないということ自体が自己否定のように感じたこともあった」とおっしゃっています。

そのような中で岡田様は、ビジネスコンサルタント(BCon)の担当営業から「学び手の世代によってその脳の構造に違いがあると言われている」という話を聞き、同僚の方に情報収集をされました。すると、ある資格の受験勉強をする際、40代のご同僚は紙のテキストで、そのご兄弟(30代)は動画配信サイトを見て自己学習した結果、共に合格したのだそうです。このお話を聞いて、学習「目的」は共通していてもその「手段」は世代に合ったものが必要であると認識を改めたということです。

新入行員に学びやすい環境の模索

同じ頃、新入行員教育については別の課題もありました。人事部の「インストラクター」と呼ばれるご担当者は新入行員全員のメンターという役割も担っていましたが、今までは新人研修期間の後、店舗に配属されてからの新人の様子をタイムリーに把握できず、うまくフォローができていませんでした。

こういった状況から、個々人が検索機能などを使いながらスマホで動画学習でき、受講生同士の関わり合いができる(SNSに近い要素がある)ような「プラットフォーム」を活用した教育を実現したいという構想が固まっていきました。また、DHD bankの推進初期には全行員の学習環境となるツールを探していらっしゃいましたが、新型コロナウイルスの流行もあり、まずはより手当てが必要な新入行員の教育環境の整備が急務という状況になりました。

そして、複数のツールの情報収集をしながら図1のように自行が重視する要素を絞っていきました。

ツール検討時の「求める機能リスト」伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋の図
(図1:伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋)

最終的に、下記4点が決め手となり、UMUという学習のプラットフォーム(https://bcon-license.jp/microlearning/)をご導入いただきました。

  1. 集合・在宅研修、新入行員のデジタル研修日誌など幅広い活用が可能
  2. 人財育成のサポートツールとして、他のLMSや動画配信サービスよりも使い勝手が良さそう
  3. セキュリティ基準確認の早期完了
  4. 運用サポートが手厚い

こうして、2021年1月から3月にかけてコンテンツ作成のためのワークショップを通して環境整備を進め、4月から新入行員127名に対してUMUを活用した新入行員研修を実施されました。

展開スケジュール、伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋の図
(図2:伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋)

学習のプラットフォームを活用して在宅研修中の新入社員同士の学ぶ環境を整備

新入行員研修は、4月から6月まで図3のような日程で実施されました。UMUはその研修の前後や最中、また自己学習ツールとして次のような方法をメインにご活用いただきました。

2021年度研修スケジュール、伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋の図
(図3:伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋)

①オンライン研修日誌で他の支店の同期と学びあい

従来は紙の冊子に新入行員が研修や日々の業務の振り返りなどを書き、指導員(OJT担当者)がそれを定期的にチェックするという支店内交換日誌として使用していたものをUMU上に置き換えられました。今まで新入行員は自分の支店の日誌しか見る機会がありませんでしたが、デジタル上で全体に公開することで他支店の同期の学びや先輩から受けたアドバイスなどを参考にすることができるようになりました。

現在は約半数の新入行員が自主的に自分の配属以外の支店の日誌をチェックしており、岡田様も「講師が指導するよりも、同期が学んでいる姿に啓発されるほうが効果はある」と感じられています。
(図4:伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋)

UMUイメージ図
伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋の図
(図5:伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋)

②自己紹介動画でオンライン絆づくり

新入行員が自身の自己紹介をしている様子を録画し、同期同士で動画を閲覧しあった後に印象に残った動画の投票をするUMU上のコンテストを行いました。
 
地域によっては入行後も同期となかなか対面で会うことができないという事情の中で、新入行員同士の絆づくりのきっかけになるような仕掛けができました。岡田様は「在宅研修中のためマスクが外せて自分の好きな環境で撮れるということもあり、顔と名前を憶えやすく、それぞれの個性が出てインパクトのある動画も数多くあった」と振り返られています。
(図6:伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋)

UMUイメージ図

③研修カリキュラムをUMU上に設計して導線整備

研修の事前・事後課題コンテンツ配信やガイダンス資料の掲載、アンケートの集計等をUMU上で一括管理されました。
 
配属店舗のメンバーとの交流ツールの配布、決意表明動画の投稿など、在宅・集合研修内のカリキュラムに沿って毎日の研修用コンテンツを整備することで、受講生が研修内容の反転学習や復習をしやすい研修のサイクル化支援ツールになりました。その他、瞬時に集計ができるアンケート機能などを使って受講生の声を集めながら運営を進められました。

(図7:伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋)

UMUイメージ図

学習のプラットフォームを活用することで実現できたこと

初めてUMUという学習のプラットフォームを導入しオンライン研修を実施した伊予銀行様では、新入行員研修後、新入行員(有効回答数:102)にUMUを利用した在宅研修に関して自由回答式のアンケート調査を行いました。

学習プラットフォームを活用することで実現できたことの図

9割が肯定的な内容で、多かった感想としては、第1位が「操作性や利便性の良さ」について、第2位は「学習効果の高まり」について、第3位は「オンライン上での他者とのつながり」についてのコメントがありました。

(図8,9:伊予銀行様のウェビナー資料から抜粋)

 また、今回の取り組みによる効果として、大きくは下記3つがありました。

①人間関係の早期構築

オンライン上だけでも同期同士の絆づくりのきっかけになる仕組みができました。実際に岡田様は「新入行員は自己紹介動画などであらかじめ同期の顔や人となりを知った上で集合研修に参加していたので、例年より打ち解け合うのが早かった」と感じられています。

新入行員の声

「対面で会えなくても、同期が毎日頑張っている様子が分かったので自分のやる気に繋がった」

「オンライン研修ということで心配があったが、同期の顔と名前が一致できた。お互いの理解が深まった」

②オンラインとオフライン・プラットフォームの融合による学びの深化・進化

講義動画や研修の資料の掲載、振り返りなどのアウトプットをプラットフォームに残すことで研修の内容をいつでも振り返りできる環境ができました。これにより個々人のペースに合わせた学びが可能になり、学びの深化・進化につながりました。


また、事務局からこまめに受講生へアンケート調査を行ったことで、その後の研修に関する検討材料を集めることができました。

新入行員の声

「学習したことの整理やアウトプットに使うことで、知識の定着化につながった」

「好きな時間に過去の講義などを振り返ることができ、とても便利だった」

③行員のDXへの意識醸成

前述の通り伊予銀行様は現在全行的にDX化を進められていますが、岡田様は「今回の取り組みがDX施策に対する姿勢を印象づける施策の一つとなり、行内全体におけるデジタル化への意識醸成に効果があった」と感じられています。

今後の展望

 最後に、今後の展望について岡田様は次のようにお考えになっています。

「日誌以外での活用についてはまだ模索中で、指導員(OJT担当者)にどうやってログインの習慣化をしてもらうかという点はこれからの課題です。また、事務局としては細かな運用の改善や、UMUの操作ノウハウの伝承も考えていきたいです。そして、現在では新人とその職場関係者のみにアカウントを付与していますが、今後それ以外、全行での展開をどうするかということについて検討していきたいと思っています」

ビジネスコンサルタント担当者より

「人財育成の最善の手段は集合研修」という固定観念を取り払ってプランしたこと、かつ、新入行員を指導するインストラクターの方々のご意見を聞きながら取り組みを進めたことが成功のポイントだったと感じております。

プラットフォームを通じて、「いつでも、どこでも、つながれる、学べる」環境を作っていくことが「行員が自律的に学べる環境の整備」にもつながると感じております。

今後も良きパートナーとしてサポートさせていただきたいと思っております。

鵜飼裕志 
ラーニングデザイン部 
マネジャー
鵜飼裕志
ラーニングデザイン部
マネジャー