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タレントマネジメントとは?定義や目的を解説!

今、大手企業を中心に、多くの企業がタレントマネジメントに取り組んでいます。少子高齢化による人材不足やDXの進展、人的資本の開示要請もあり、今後さらに多くの企業が注力すると考えられます。この記事では、初心者の方でも理解しやすいよう、タレントマネジメントの基本的な定義、注目される背景、企業にもたらすメリット、導入ステップについて解説します。

1.タレントマネジメントの基本理解

タレントマネジメントは、20世紀終盤、特にグローバル化が進展したころから重要性が急速に高まりました。近年、人材がイノベーションにおいて最も重要な要素だという認識が広がり、さらに注目を浴びています。まずは定義からご案内します。

タレントマネジメントとは?

タレントマネジメントとは、組織が必要とする人材を確保、育成、維持、そして最適に活用する経営戦略のことです。適切な人材を適切なタイミングで適切な場所に配置し、社員が潜在能力を最大限に発揮できるように支援するプロセスともいえます。

弊社では「人的パフォーマンスと人材価値の持続的な向上を目的として、タレントマネジメントシステムなどのHRテクノロジーを用いて効果的な人材活用を実現する、一連の取り組み」と考えています。

タレントマネジメントの定義として、多く引用されている定義二つをご紹介します。

米国人材マネジメント協会(Society for Human Resource Management :SHRM )の定義:

「現在および将来のビジネスニーズを満たすために必要なスキルと才を持つ人を引き付け、能力開発し、引き留め、活用するプロセスを開発することによって、職場の生産性向のためにデザインされた、総合的な戦略またはシステムを推進すること」

出典:『2006 talent management : survey report』Shawn Fegley ,Alexandria, VA : Society for Human Resource Management, 2006年を株式会社ビジネスコンサルタントが翻訳



米国人材開発協会(Association for Talent Development :ATD)の定義:

「ビジネスゴールと整合性の取れたタレントの獲得や開発、配置のプロセスを通して、文化、エンゲージメント、ケイパビリティとキャパシティーを構築することで、組織に短期的および長期的な成果を実現する、人的資本を最適化するホリスティックなアプローチ」

出典:『Talent Management Practices and Opportunities』ATD Research,2009年を株式会社ビジネスコンサルタントが翻訳

さまざまな定義がありますが、ビジネスニーズやビジネスゴールという言葉から、人事施策というよりも、経営戦略の一環という位置付けであることが分かります。

タレントマネジメントの発祥は?

タレントという概念が普及する発端となったのは、欧米の大手コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー1997年から2000年にかけて実施した調査結果をまとめた「War for talent※1」でした。この中で、近い将来に人材獲得・育成競争が起こると予測され、タレントをマネジメントするというコンセプトが示されました。

当初は、まれに見る非凡なタレントをいかに取り込むかが重要視されていました。しかし近年ではグローバル化した人材争奪戦の中で、現場のニーズに即したタレントをどのように確保するかが重要となっています。

※1 Michaels, E. H, Handfield-Jones, H. and Axelrod, B. 2001. The War for Talent. Harvard Business SchoolPress.(マッキンゼー・アンド・カンパニー監訳/渡会圭子訳『ウォー・フォー・タレント 人材育成競争』翔泳社,2002年)

2.なぜ今、タレントマネジメントに注目が集まるのか?

企業は常に変化する市場と技術の進歩に迅速に対応する必要があります。タレントマネジメントは、このような変化に柔軟に対応できる高いスキルと能力を持った人材を育成するための手法として注目されています。

少子高齢化に伴う人材不足

2010年をピークに生産年齢の人口比率が減少しています(図1)。

将来の人口予想の図
図1 将来の人口予想
出典:『資料4 2050年までの経済社会の構造変化と政策課題について』経済産業省  https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/2050_keizai/001.html

近年、労働力の減少と経験豊富な高齢者の退職により、企業にとって人材確保は重要な課題といえます。特に日本を含めた多くの先進国では、若年層の人口が減少する一方で、高齢者の割合が増加しており、これが労働市場に大きな影響を与えています。企業は、多様な世代の才能を統合し、それぞれの強みを最大限に活用することで、この人口動態の変化に効果的に対応することが求められています。

労働市場の変化とグローバル化の影響

労働市場は、国境を越えた人材の流入が増えることで、多様な文化や価値観を持つ人材が参入し、これまで以上に流動的になりました。国内の経済成長が鈍化し、自社が対象とする市場がグローバル化することで、企業はより多様な視点を持つ人材を求めるようになりました。

これにより、タレントマネジメントの重要性が高まり、企業は国内外の人材を適正に管理し、効果的に活用する方法を模索しています。

企業における人的資本経営の推進

現在、経営戦略として人的資本経営を取り入れる企業が増えています。その理由は、企業価値における無形資本の占める割合が高まっていること、適切な人材の確保や育成や維持が企業のイノベーションと競争力を高める基盤だからです。

人材へ投じる費用は、単なる「コスト」ではなく、企業のイノベーションと成長の基盤となる「投資」として扱われるようになっています。人的資本経営のアプローチが、タレントマネジメントに直結していることもあり、改めて注目されるきっかけになっています。

3.タレントマネジメントの目的や目標とは?

具体的な目的や目標としては、以下が挙げられます。

①一人一人の社員の才能と適性の把握
社員それぞれの能力と適性を正確に理解し、その情報に基づいた人材配置を行います。そして、適切なトレーニングとキャリアパスを提供し、社員のポテンシャルを引き出します。

②適切な人材配置
社員のスキルと適性を考慮し、その能力を効果的に活用できるポジションに配置することで、社員が自分の能力を最大限に発揮し、組織全体の効率と生産性を高めます。

③継続的な人材育成とキャリア開発
一人一人のキャリア目標に合わせた教育プログラムは、社員のモチベーションと組織エンゲージメントを高めます。これは、長期的な組織の発展に貢献します。

④パフォーマンス管理とモチベーションの向上
目標設定、フィードバック、評価などの定期的なパフォーマンスへのフィードバックは、社員が自身の業績を客観的に理解することができるよい機会です。また、このプロセスは社員のモチベーション向上にもつながります。

⑤後継者計画とリーダーシップの育成
有能なリーダーの発掘と育成により、組織は企業競争の変化に柔軟に対応し、持続的な成長を遂げることができます。将来のリーダーを見極め、後継者として計画的に育成することは、組織のビジョンと戦略を実現する上で重要です。

4.タレントマネジメントのメリット

企業は最適な人材を発掘し、それぞれの能力を最大限に生かすことができます。これにより、社員一人一人のキャリア開発が促進され、組織全体のエンゲージメントと生産性が向上します。

優秀な人材の発掘

企業が競争力を保つためには、社員の活用されていない才能を見いだし、ビジネスの成功につなげることが重要です。過去に採用を辞退した人、退職した優秀な人、特定のビジネスには不向きでも他で活躍できる人などを含みます。人材情報を蓄積し、データを通じて関係を築くことで、接触を継続し、優秀な人材をタイムリーに確保しやすくなります。

適材適所での人材活用

タレントマネジメントの要点は、個々人の適性や能力を理解し、その強みを最大限生かせる環境を整えることです。これまで日本の企業は、ポテンシャルを考慮し、既存のポストに人を配置してきました。

しかし、タレントマネジメントにおいては、仕事の課題解決に必要なスキルや経験を持つ人材を仕事に合わせて適切に配置することが肝心です。これにより、優秀な人材の離職防止と有効活用が可能になります。

自律的なキャリア開発の促進

タレントマネジメントを活用することで自律的なキャリア開発を促進することができます。社員が自分のキャリアパスを自主的に設計し、必要なスキルを身に付けられる環境を提供することで、モチベーションが高く、自律した人材の育成につながります。

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エンゲージメントの向上

優秀な人材の発掘と育成、適正で適切な配置の実現は、社員のエンゲージメントを高めます。適材適所により、自分の能力を十分に発揮することができるからです。そして、適切な評価は社員の納得感を高め、仕事に対する熱意や集中につながります。

5.タレントマネジメント成功のキーワード

戦略と人材がシームレスに連動する全体最適化、個人の能力とニーズに合わせたパーソナライズ化、最新のITツールを活用した、効率的な管理システムの構築が成功のキーワードとなります。

タレントマネジメント成功のキーワード3つを説明する図
図2 タレントマネジメント成功のキーワード

全体最適化|企業戦略と人材戦略の連動

タレントマネジメントの実現には、企業全体の長期的な利益に焦点を当て、人材戦略を組織のビジョンと密接に結び付けることが重要です。各部署の短期的な利益や部分最適に偏ると、問題が発生する可能性があります。

例えば、特定の部門だけが優秀な人材を獲得し、他の部門では才能の不足に直面する可能性があります。また、短期的な部門目標に焦点を当てすぎると、企業全体の長期戦略と人事戦略が乖離することがあります。結果として、将来の成長機会を見逃すか、市場の変化に遅れを取ることになるかもしれません。さらに、部門間の過剰な競争を助長したり、社員のモチベーション低下につながる可能性があります。全体最適での実践がポイントです。

育成のパーソナライズ化

社員一人一人の能力、キャリアに対する目標や強い思いを理解し、個別の育成プランを提供することは、社員の自律的なキャリア構築を促します。育成プランのパーソナライズ化は、社員が、現業に関わらず将来的な視点で、スキル習得することを可能にします。このような取り組みは、企業にとって人的資源のポテンシャルを最大化します。

ITツールの活用|タレントマネジメントシステム

タレントマネジメントを実現するためには、ITツールの活用が不可欠です。人材データの管理、育成計画の追跡、パフォーマンスの評価といった情報を一元管理しすることで、効率的なタレントマネジメントの検討ができます。

6.タレントマネジメントを導入するためのステップ

タレントマネジメントを導入するためには、計画的かつ段階的なアプローチが必要です。以下のステップは、タレントマネジメントを導入し効果的に運用するためのガイドラインです。

ステップ 1 現状分析とニーズの特定

現在の人事管理の状況を詳細に分析し、タレントマネジメントを導入する必要性を明確にします。企業の目標、人材の質、組織の課題を理解し、どのようなタレントマネジメントのアプローチが必要かを特定します。

ステップ 2 タレントマネジメント戦略の策定

企業の長期的なビジョンと連動したタレントマネジメントの戦略を策定します。この戦略には、人材の採用、育成、配置、評価、モチベーション管理などを含みます。

・ステップ 3 システムとプロセスの整備

タレントマネジメントを効果的に実施するためには、適切なシステムとプロセスの整備が不可欠です。これには、人材データベースの構築、パフォーマンス評価システムの導入、キャリア開発計画の策定などが含まれます。

・ステップ 4 社内コミュニケーションと関係者の巻き込み

タレントマネジメントの成功は、社内の関係者から理解と支持を得る必要があります。経営層から一般社員まで、全員がタレントマネジメントの目的とメリットを理解し、積極的に関与する必要があります。

・ステップ 5 実施とモニタリング

実際にタレントマネジメントを実施し、その効果を定期的にモニタリングします。パフォーマンスの追跡と社員へのフィードバックが必要です。

・ステップ 6 継続的な評価と改善

タレントマネジメントは1度きりの取り組みではありません。継続的な人事情報の分析とデータベースの改善、社員のパフォーマンスの評価に応じた改善をするなど、組織の成長と変化に柔軟に対応することが必要です。

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7.まとめ

本記事は、タレントマネジメントの入門知識として、タレントマネジメントの定義を改めて確認するとともに、注目される背景や、目的、メリット、導入のポイントを解説しました。

タレントマネジメントを適切に実施することで、企業は変化する市場環境に柔軟に対応し、長期的な成功の可能性を高めます。併せて、人材の育成と適材適所の配置が可能になり、社員にとって自律的なキャリア促進とエンゲージメント向上につながります。本記事が貴社のタレントマネジメントを実現する上でお役に立てることを願っています。

レポート作成:株式会社ビジネスコンサルタント 情報提供サイト事務局