トレンド情報

人的資本経営×タレントマネジメントシステム 活用の3ステップ

人的資本経営への関心が高まる中で 、タレントマネジメントシステムの導入がさらに加速しています。タレントマネジメントシステムを活用し、人的資本経営を実現するために大切な3ステップをご案内します。

※本ウェビナーレポートは、2022年9月21日に実施した「人的資本経営×タレントマネジメントシステム 活用の3ステップ」の内容をまとめたものです。

<登壇者情報>
株式会社ビジネスコンサルタント  
執行役員/ヒューマンキャピタル&サーベイソリューション部長 瀬戸貴士

人的資本経営の取り巻く環境

組織運営モデルへのパラダイムシフト20世紀型から「自律・創発・協働」型へ

私たちは今、VUCA時代を駆け抜けています。その中で「組織運営モデルを20世紀型のものから、自律・創発・協働型へと変えたい」と経営者からご相談をいただくことが増えています。さまざまな組織活動を通して、多くの組織が無形資本の充実、価値創造を目指しています(図1)。

人的資本経営を取り巻く環境の図
図1 人的資本経営を取り巻く環境

今、日本企業の多くは、20世紀型の組織運営モデルで運営をしていると言われています。
20世紀型の組織運営モデルの根底には、安定している組織が良い組織という考えがあります。その組織が求めるのは、きちんと要求を聞く人材です。そして組織活動では正解が求められます。

それに対し、自律・創発・協働の組織運営モデルの考え方の根底には、変化対応できる組織が良い組織という考えがあります。その組織が求めるのは主体性のある大人、つまり自律した個人です。そして組織活動には学習する姿勢が求められています。

今後、時代の変化に対応するために20世紀型の組織運営モデルから、自律創発協働の組織運営へパラダイムシフトが必要です。

中長期的な企業価値の向上には「人的資本への投資が不可欠」

ある調査会社がS&P500(※)を対象に実施した「企業価値に占める無形資産の割合」調査があります。そこでは衝撃的な結果が出ており、アメリカでは2020年には無形資産の割合が90%を占めている、とのことです。

つまり、企業の中長期的な競争力の源泉が設備ではなく、人材、技術、ブランド等の無形資産になってきているということです。特に、人的資本への投資は中核的な要素とみなされ、中長期的な企業価値の向上には「人的資本への投資が不可欠」という共通認識ができています。

2018年に国際標準化機構(ISO)は人的資本に関する情報開示のガイドラインを策定しました。また、2022年4月に日本国内で初のISO30414審査・認証機関が設立されています。日本でも経済産業省が「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」を立ち上げました。そして研究会の報告書として「人材版伊藤レポート2.0」をリリースし、人的資本への投資と、その情報を開示することの重要性が説かれています。

(※)ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している代表的な500銘柄

「攻め」と「守り」の2つのアプローチ

人的資本経営の取り組みには、攻めと守りの2つのアプローチがあります。「攻め」のアプローチは「人材版伊藤レポート2.0」を中心とした取り組みです。「人材版伊藤レポート2.0」は人材戦略の在り方について提言しているので、上場・未上場は関係ありません。

「守り」はISO30414に代表されるように、開示項目を明らかにしていくという取り組みです。この「守り」は先に紹介した人的資本可視化指針にあるように資本に関する資本市場へ情報開示の在り方に焦点を合わせたのです。現在は上場会社を中心に関心が高い事項といえます。

人材ポートフォリオの重要性~人材版伊藤レポート2.0 ~

人的資本への変化が組織にイノベーションが生まれる鍵に

今後のアクションの羅針盤となる変革の方向性を図表2のように示しています(図2)。

変革の方向性の図
図表2 変革の方向性

 ※出典:1.人的資本経営の実現に向けた検討会、 報告書 (人材版伊藤レポート2.0) (経済産業省https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf から一部抜粋

人材マネジメントの目的は人的資源・管理(HRM:Human Resource Management)から人的資本・価値創造(HCM:Human Capital Management)へと、人材の考え方がリソースからキャピタルへ捉え方が変わっていきます。

人的資源の「資源」は「コスト」です。使えば使うほど目減りします。人的資本の「資本」は「キャピタル」です。使えば使うほど資本が積み増されていきます。この積み増される前提にあるのが「投資」です。

つまり、人材マネジメントの目的が「消費」から「投資」へと変わってきています。このような人的資源から人的資本への位置づけの変化が、組織がイノベーションを生む鍵になります。

人材戦略の出発点は、動的ポートポートフォリオの構築   

次に、経営戦略と連動した人材戦略について、「3つの視点」と「5つの共通要素」を示しています(図3)。

「3つの視点」と「5つの共通要素」の図
図3 「3つの視点」と「5つの共通要素」
※出典:人的資本経営の実現に向けた検討会、 報告書 (人材版伊藤レポート2.0) (経済産業省)https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinteki_shihon/pdf/report2.0.pdf から一部抜粋

人材戦略には3つの視点が存在しています。また、人材戦略の具体的な内容として共通要素として5つを挙げています。自社の経営戦略上重要な人材アジェンダを経営戦略との連動を意識しながら具体的に考えることが求められています。つまり、①~⑤の中でも①である動的な「人材ポートフォリオ」の構築が、経営戦略と連動した人材戦略構築の出発点になるということです。

動的な人材ポートフォリオの作成と活用

人材の見える化・ポートフォリオ化による人的資本経営の実現

先ほど、人材の見える化とポートフォリオ化が重要とお伝えしました。動的な人材ポートフォリオの実現には、事業のポートフォリオと人材のポートフォリオを一致させることが重要です。しかし多くの企業では、事業ポートフォリオは描けていますが、人材ポートフォリオは描けていません。

「勘・コツ・経験」で人材を見たいように見て活用している企業が多いのではないでしょうか。「どのような切り口で概念化すればよいのか分からない」「何を手始めに進めればよいか分からない」。このようなお悩みを持つお客さまに対し、組織ごとの人材ポートフォリオ構築を作成するお手伝いをしています。弊社ではさまざまな人材の仮説モデルを所有しているため、人材の見える化からご支援が可能です。

人材傾向分析で組織と人材の活用方法が分かる

以下は、弊社が人的資本経営をコンサルティングする際の全体像です(図3)。

人的資本経営をコンサルティングする際の全体像の図
図4 人的資本経営をコンサルティングする際の全体像

この全体像のキーワードは「人材傾向分析」です。「人材傾向分析」を行うことによって、組織が人材をどのように活用するか、人材が組織をどのように活用するのかという二つの観点から議論をすることが可能になります。


具体的には、

(視点1、共通要素2):「組織が人をどのように活用するのか」という観点からサクセッションプラン・戦略的異動配置・採用(人材獲得)を明らかにします。また、「人材が組織をどのように活用するか」という観点から能力開発やリスキリング、キャリア開発を明らかにします。

(視点2):「従業員エンゲージメント」はこれら二つを明らかにした結果、得ることができます。そして、明らかにしたものは、測定を可能にするために見える化します。

(共通要素2・5):見える化することで、現状とありたき姿とのギャップを明確にします。併せて働き方(時間・場所)・処遇(評価・賃金)の検討を含めたギャップ分析までを一連のサイクル(中期計画単位)としています。

記のサイクルで検討、見直しを行います。これが、弊社で人的資本経営をお手伝いさせていただく際の全体像です。そして、この後ご案内するタレントマネジメントシステムは、この一連のサイクルの業務スピードを加速させるツールです。

人材ポートフォリオの構築に必要なパフォーマンスモデル

人材ポートフォリオを構築する際、弊社がよく使用する仮説モデルとして「パフォーマンスモデル」があります(表1)。

「パフォーマンス=能力×意欲×考え方」

パフォーマンスモデルと各要素の定義の図
表1 パフォーマンスモデルと各要素の定義

このモデルの各要素の定義を図のように設定し、それぞれ弊社の診断ツールで測定することができます。「能力」はコンピテンシーを見える化し人材傾向分析で測定します。「意欲」はチーム運営上の役割とのマッチングを見える化し「VIA-Role・Matching診断」で測定します。「考え方」は道徳的価値を見える化し、「VIA(Value in action)-Pro診断」で測定します。

各項目の詳細を確認していきたいと思います。

「能力」コンピテンシーの可視化

「人材傾向分析」は、一人一人のコンピテンシーの特徴は6つの中でどのキャリアモデルに近づいているかを明らかにするものです(図5)。

コンピテンシーの可視化の図
 図5 コンピテンシーの可視化

組織の勘・コツ・経験で偶然、個人のコンピテンシーとキャリアモデルが一致している場合もあるでしょう。しかし、ここ最近はなかなか一致しないという声をお聞きします。一致しない結果、以前は「宝の持ち腐れ」でしたが、今は「組織を出ていく選択」になっています。
そして、本人も自分の特徴が分かっていないこともあります。コンピテンシーを可視化することで、自分の特徴を生かすこと、改善すること、組織の中でどのような貢献するかを考えることができます。

「意欲」チーム運営上の役割とのマッチング

ここでは状況的役割がキーワードになります。仕事を遂行する中で役割が発生します。マッチングとは、役割を担う際に、役割を果たせるかどうかは関係なく、喜んで引き受ける人なのか、けげんな表情を浮かべる人なのかということです。個人の持ち味・特徴・癖と役割をマッチさせることが大切です。これはモチベ―ションやエンゲージメント、生産性の向上にも関わってきます。

「考え方」道徳的価値

例えば役員登用の候補者を見たときに、能力は実績や技術、資格、プロジェクト成果から判断できます。しかし、考え方に関してはその人を知っている身近な人しか分かりません。

しかし、ツール(「VIA(Value In Action)-Pro診断」)を活用すれば、誰でもその人の価値観・考え方を理解することができます。その人の価値観は、組織が大切にしている価値観とマッチしているのかどうかの判断をする材料になります。

上記で見える化された、「能力」「意欲」「考え方」のデータはタレントマネジメントシステムを活用している場合、一人一人のデータをインポートし活用することができます。

タレントマネジメントシステムをうまく活用できない理由は6つ

動的な”人材ポートフォリオ”を実現するために、人材ポートフォリオ構築の一連のサイクルを迅速に行うことを可能にするのがタレントマネジメントシステムと先述しました。

しかし現状はタレントマネジメントを活用しきれず経営陣からの「経営幹部や管理職、次期リーダーそれぞれの候補になる人材は誰?」「これからの事業戦略にマッチする人材は誰?」などの要望に対してうまく対応できていないとお伺いします。

では、なぜうまくいかないのでしょうか。タレントマネジメントシステムをうまく活用できない主な理由は6つあります。

タレントマネジメントシステムが活用できない、6つの理由

•データをとりあえず入れたため、見たいように見られない=データが加工されていない

•人材を洗い出せるような、有効なデータが入っていない

•分析の仕方、アイデアがない

•TMS上でのアウトプットイメージが持てていない=機能の理解が不十分

•どのような人材が必要なのか、イメージを持てていない

•そもそもTMSを使って何を実現したいか、考えられていない

「タレントマネジメントシステムに有効なデータは入っていない」「分析の仕方やアウトプットのイメージができていない」「そもそもタレントマネジメントシステムを使って何を実現したいのか明確でない」などが主なものです。

では、タレントマネジメントシステムを最大限に活用するためにはどのようにすればよいのでしょうか。
ポイントをご紹介します。

タレントマネジメントシステム活用の3つのポイント

タレントマネジメントシステム活用のポイントは3つあります。3つのポイントを明確にすることで、自社がタレントマネジメントシステムで実現したいことは何か、そのために何のデータが必要か、現状の活用度合いはどの段階か、を把握することができます。

ポイント① 3つの段階で考える

1つ目は、成果を3つの段階で考えることです。
第1段階は「データの一元化」です。タレントマネジメントシステムにアクセスすれば全てのデータを見られる状況にすることです。
第2段階は「業務の効率化」です。人事業務のワークフローをシステムに載せ替えることで生産性の向上を目指します。
第3段階は「組織課題の解決」です。さまざまな人材に紐つく情報から組織課題を発掘し解決する、現在では人的資本経営に生かすことを目指します。

ポイント② 3つの段階でどのようなデータ収集が必要かを理解する

2つ目は「3つの段階でどのようなデータ収集が必要かを理解する」です。
以下がそれぞれの段階で必要なデータです(図6)。

タレントマネジメントシステムを活用する3つの段階の図
 図6 タレントマネジメントシステムを活用する3つの段階

・第1段階「データの一元化」:人事基幹システムのデータや各部門で所有する「過去と今のデータ」
・第2段階「業務の効率化」:今現在収集や更新に手間がかかっている今後の評価やスキル(資格情報や専門スキルなど)といった「将来のデータ」
・第3段階「組織課題の解決」:「戦略的なデータ」となる「パフォーマンスモデル」の”コンピテンシー”や”意欲”、”考え方”のデータ

ポイント③「5つの問いに答える」

タレントマネジメントシステムを最大限に活用するポイントの3つ目は「5つの問いに答える」です。下記にまとめてありますが、1.誰が、使うのか 2.何の目的で、使うのか 3.何の情報が、必要なのか 4.どのようなタイミングで、必要なのか 5.何のデータを使って、どのようにタレントマネジメント上でアウトプットするかといったことに答えられる状況にすることが重要です。

“5つの問い”に答える

1.誰が、使うのか
経営者、役員、ライン長、一般従業員、人事部門、経営企画部門

2.何の目的で、使うのか
それぞれの立場で求められる意思決定のため

3.何の情報が、必要なのか
サクセッション、主管部署のパフォーマンス管理、目標管理と人事考課、モチベーション管理、自己理解・仲間探し(キャリア)、事務効率化

4.どのようなタイミングで、必要なのか
日、週、月、四半期、半期、通期

5.何のデータを使って、どのようにTMS上でアウトプットするか
個人属性、人事データ、労務データ、面談記録、組織・個人診断

まとめ

人的資本経営を取り巻く環境、タレントマネジメントシステムを活用するポイントについてご案内しました。人的資本経営を実現する方法の1つにタレントマネジメントシステムの活用が有効です。ただ、システムは入れたが上手く使いこなせていない、まず、何から始めればよいかわからないという声も多くお聞きします。今回ご案内したポイントが人的資本経営の実現の一助となれば幸いです。

弊社は2019年から株式会社プラスアルファコンサルティングと提携しています。そして「タレントパレット」の販売代理店として、タレントマネジメントシステムの導入から運用・活用までの提案をしています。「タレントパレット」では、データ管理からデータ活用、人事業務の効率化から戦略人事の実現までさまざまな機能があります。ご興味やご関心がございましたら、システムのデモなども実施いたしますので、以下までお気軽にお問い合わせください。

レポート作成:㈱ビジネスコンサルタント 情報提供サイト事務局