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組織マネジメントとは?フレームワークや理論、能力、実施ポイント

組織マネジメントとは?フレームワークや理論、能力、実施ポイント

変化の激しい現代のビジネス環境で、企業の持続的成長や人的資本経営を実現するためには、組織の実態を把握し、効果的な組織マネジメント力が求められます。本記事では、組織マネジメント基本的な概念から、主要な理論フレームワーク実施ポイントについて詳しく解説します。

目次

  1. 組織マネジメントとは
    組織マネジメントの目的
    マネジメントとリーダーシップの違い
  2. 組織マネジメントの必要性
  3. 現代に求められる組織マネジメント
  4. 組織マネジメントに取り組む3つのメリット
    組織全体の生産性向上
    管理職の負担軽減
    個々に合わせたマネジメント
  5. 組織マネジメントの種類
    トップダウンマネジメント
    ボトムアップマネジメント
    ミドルアップダウンマネジメント
  6. 組織マネジメントに関する理論
    ドラッカーの理論:組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関
    バーナードの理論:組織の3要素
    チャンドラーの理論:組織は戦略に従う
    アンゾフの理論:戦略は組織に従う
  7. 組織マネジメントのフレームワーク「7S」
    ハードの3S
    ソフトの4S
  8. 弊社が推奨する組織マネジメントのフレームワーク
    スターモデル(ジェイ・R・ガルブレイス)
    組織の合致性モデル(マイケル・L・タッシュマン)
  9. 管理職に必要な組織マネジメント能力
    コミュニケーション力
    人材マネジメント力
    目標設定力
    計画遂行力
    リスク管理力
  10. 現代の組織マネジメントを実現する4つのポイント
    ミッションやビジョンの明確化
    心理的安全性の確保
    部下同士のコミュニケーションの活性化
    適切な影響力の行使
  11. まとめ

1.組織マネジメントとは

組織マネジメントとは、一般的に「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の4つの経営資源を適切に管理し、組織の目標達成に向けて効率的かつ円滑に運営する手法のことを指します。企業のミッションやビジョンを実現し、新たな価値を創造するために、これらの経営資源を効果的に活用することが求められます。

組織マネジメントの目的

組織マネジメントの目的は、経営資源を適切に管理し、組織の目標を達成することです。その中でも特に重要だとされているのが「ヒト」の管理です。変化が大きく、先の見通しが困難なVUCA(ブーカ)時代と言われる現代で、組織が事業を継続するためには、状況の変化に素早く柔軟に対応できる「ヒト」を核とし、組織や行動を変えていくことが求められるからです。

例えば、目的を達成するためには、適材適所に従業員を配置し、最適なリソース配分を行うことが求められます。また、従業員が能力を発揮できる環境を整えることで、満足感が高まり、持続的な成長につながります。

このように、組織マネジメントは企業の在り方や将来性を左右する最重要課題であり「ヒト」のマネジメントが鍵を握っています。

マネジメントとリーダーシップの違い

マネジメントとリーダーシップはしばしば混同されがちですが、両者は異なる概念です。
一般的に、リーダーシップはマネジメントにおいて重要な要素であり、効果的なマネジメントにはリーダーシップのスキルが求められます。

  • マネジメント
     組織の目標を達成するための戦略の策定や仕組みをつくり、実行、管理すること
  • リーダーシップ
     方向性を示し、人々を動機づけ、目標やビジョンの達成に向けて導く力

弊社では、リーダーシップを「与えられた状況の下で、特定の目標や課題の達成に向かって、人間(個人または集団)の活動に対して、影響を与える力(パワー)の行使のプロセスである」としています。つまり、リーダーシップを「影響力」と捉えています。

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2.組織マネジメントの必要性

組織マネジメントの必要性が高まっている主な背景は次の通りです。

 ・「サービス経済化」「グローバル化」「ソリューションビジネス化」により、イノベーションや多様化などへの急速な対応が求められている

 ・「ものづくり国家戦略ビジョン※」に基づきパラダイムシフトの必要性が高まっている

 ・組織力(職場機能)が弱体化している

※参考:ものづくり国家戦略ビジョン(内閣府)
https://www8.cao.go.jp/cstp/project/bunyabetu/mono/3kai/siryo2-2.pdf

こうした状況に対応するため、組織のビジョンを部下と共有し、一人一人の力を引き出して、まとめていくことが現代にふさわしい組織マネジメントであり、多くの組織で経営戦略や人的資本の見直しが必要とされているのです。

3.現代に求められる組織マネジメント

組織マネジメントは、時代に合わせたアプローチが必要です。

前述した通り、現代は、外部環境だけでなく、職場環境も急速に変化しています。そこで弊社は、組織は安定的な「20世紀型組織」から、柔軟に変化に対応できる「自己革新組織」への成長が重要だと考えています(図1)。

図1 組織運営のパラダイムシフト

従来の「何をどのように行うか」という考え方から「なぜ行うか」を共に考えられる組織にすることが大切です。

現代は、これまで当然とされていた前提が次々に崩れる「答えの無い時代」です。このような環境では、常に関係者間で目的意識を合わせて、状況を見極め、これから取り組むべきことを課題形成し続けることが大切です。

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4.組織マネジメントに取り組む3つのメリット

現代に合った組織マネジメントに取り組むことで得られる3つのメリットについて解説します。

組織全体の生産性向上

組織マネジメントの導入は、組織全体の生産性向上に大きく貢献します。個人の生産性が高まることで組織の生産性も向上しますが、効果はそれだけにとどまりません。

例えば、組織マネジメントのフレームワークを用いて組織を見える化をすると「複数の部署で業務が重複している」「現在の戦略に対して営業スキルが不足している」など、隠れた課題が明らかになります。これらの課題を解決することで、業務効率が向上し、生産性がさらに高まります。

管理職の負担軽減

組織マネジメントが機能することで、管理職の負担軽減が期待できます。管理職が「ヒト」「モノ」「金」「情報」の4つの資源を業務に合わせたてた最適な配置を行うことで、部下は最大限のパフォーマンスを発揮できます。また、役割分担が適正化されることで、業務の進捗もスムーズになり、業務過多に陥ることなくリソースを有効に活用できます。そうすることで、管理職自身にも時間的、精神的な余裕が生まれ、イノベーションを生み出す土壌を整えることができ、生産性も向上します。

個々に合わせたマネジメント

組織マネジメントを通じて、従業員一人一人の能力や特性を生かすことができます。個々のニーズに応じた対応は、モチベーション向上や業務への積極性を促します。働き方が多様化する現代では、この柔軟なマネジメントが人材の定着と組織の成長に寄与します。個別対応にはリソースや公平性の課題もありますが、適切なバランスを取ることで効果的に実施可能です。優秀な人材を維持し、競争力を高めることにつながります。

5.組織マネジメントの種類

組織マネジメントには、トップダウンマネジメントボトムアップマネジメントミドルアップダウンマネジメントの3つの種類があります。それぞれが異なる特徴を持ち、組織の目標達成や意思決定プロセスに影響を与えます。以下で詳しく解説します。

トップダウンマネジメント

トップダウンマネジメントは、上層部が意思決定を行い、組織全体に伝達するアプローチです。この方法では、組織のビジョン、目標、戦略が上層部から下層部に流れていきます。

トップダウンマネジメントの利点は、迅速な意思決定が可能であり、組織全体の方向性が一貫していることです。特に、危機的な状況や迅速な対応が求められる場合に効果的です。しかし、上からの指示に対して従業員が意見しづらく、現場のニーズが反映されにくいという欠点もあります。

ボトムアップマネジメント

ボトムアップマネジメントは、従業員や現場の声を重視し、彼らの意見やアイデアを組織の意思決定に反映させるアプローチです。この手法では、問題の解決策や新しいアイデアが現場から始まり、徐々に上層部に上っていく形で組織に浸透します。

ボトムアップマネジメントの利点は、従業員のエンゲージメントが高まり、現場に即した実効的な解決策が生まれやすい点です。しかし、意思決定に時間がかかる場合があり、組織全体の統一感が欠けることもあります。

ミドルアップダウンマネジメント

ミドルアップダウンマネジメントは、トップダウンとボトムアップの中間に位置するアプローチです。中間管理職が上層部と現場の橋渡し役となり、組織のビジョンや戦略を現場に伝える一方で、現場の声やニーズを上層部に伝える役割を果たします。このアプローチは、トップダウンの明確な指示とボトムアップの現場重視のバランスを取ることができます。

ミドルアップダウンマネジメントの利点は、柔軟性と適応力が高まり、組織全体の一体感が向上することです。反面、中間管理職の役割が重要になるため、彼らの能力や判断力に依存する部分が大きくなります。現代の組織マネジメントにおいて最も有効とされていますが、中間管理職の強化やサポートが重要となるでしょう。

6.組織マネジメントに関する理論

組織マネジメントに関して、多くの理論が提唱されています。ここでは広く知られている4つの理論をご紹介します。

ドラッカーの理論:組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関

マネジメントの父と称される経営学者ピーター・ドラッカーは、マネジメントを「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」と定義しました。ドラッカーによれば、マネジメントの大前提は成果を生み出すことであり、企業が持つヒト、モノ、カネといった資源を活用して利益を創出し、顧客を生み出すための仕組みをマネジメントとしています。この考え方は、組織において普遍的に役立つ理論であり、多くの企業がその手法を取り入れています。しかし、現実には適切な運用がなされていないことも少なくありません。

バーナードの理論:組織の3要素

アメリカの経営学者チェスター・バーナードは、組織が成立するためには「コミュニケーション」「貢献意欲」「共通目的」3要素が必要不可欠であると提唱しました。これらの要素のうち一つでも欠けると、バランスが崩れ、組織が機能しなくなり、解散のリスクすらあるとしています。

バーナードは、組織の成功はこの3要素がどれだけ効果的に機能するかにかかっていると主張しました。彼の理論は、公式な権限だけでなく、非公式な協力やコミュニケーションも組織の運営において重要な役割を果たすと指摘しており、現代の組織運営にも大きな影響を与えています。

チャンドラーの理論:組織は戦略に従う

アメリカの経営史学者アルフレッド・チャンドラーは「組織は戦略に従う」と提唱したことで知られ、企業の拡大と多角化における組織戦略の重要性を唱えました。彼は、アメリカの成長企業を研究し、事業戦略に応じた組織体制の必要性を導き出しました。

具体的には、新しい戦略を採用する際には、その戦略を実行するために組織構造も適応、変更されるべきであると主張しています。特に、企業の拡大や多角化に際しては、それぞれの事業に責任者を置く事業部制が有効であると示しています。

アンゾフの理論:戦略は組織に従う

アメリカの数学者兼経営学者イゴール・アンゾフは、チャンドラー理論とは対照的に「戦略は組織に従う」と提唱しました。これは、戦略より先に企業のシステムや組織構造が新しくなり、それらが新しい経営資源を生み出すという考えに基づいています。

アンゾフは、組織の能力やリソースに応じて戦略を策定するべきだとし、現実に即した柔軟な戦略が成功の鍵であると主張しました。彼の理論では、新しい戦略を策定しても、組織文化によっては遂行しづらくもなり得るため、組織の強みを生かした現実的かつ実行可能な戦略の重要性が強調されています。

7.組織マネジメントのフレームワーク「7S」

組織マネジメントのフレームワークは多々ありますが、広く知られている1つとして「7S」があります。7Sは、世界的に有名なコンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニー社が提唱したフレームワークです。

企業や組織が効果的に機能するために必要な7つの要素を特定し、それらがどのように影響し合うかを理解するための枠組みです。7Sは、ハードの3Sソフトの4Sに分けられ、それぞれが組織の成功に重要な役割を果たします。

ハードの3S

ハードの3Sとは、戦略(Strategy)、組織構造(Structure)、システム(Systems)のことを指します。これらは、組織構造に関する経営資源のため、組織の運営において比較的管理しやすい要素です。

戦略(Strategy)

戦略は、組織が長期的に達成したい目標や目的を達成するための計画や方針を指します。具体的には、市場での競争優位性を確保するためのアプローチや、リソースの最適な配分方法などが含まれます。効果的な戦略は、組織の方向性を明確にし、日々の意思決定を導く重要な基盤となります。

組織構造(Structure)

組織構造は、組織の内部の役割や責任の分担、部門間の関係性を定義する枠組みです。組織の構造が明確であれば、業務がスムーズに進み、効率的な運営が可能となります。これには、ヒエラルキー、マトリックス構造、チームベースの構造など、さまざまな形態があります。

システム(Systems)

システムは、組織が日常的な業務を遂行するための手続きやプロセスを指します。これは、情報の管理システム、報酬制度、業績評価システムなどを含みます。組織の活動を円滑するには、制度やルールを明文化し、従業員全員が一定のレベルを保って業務に取り組める環境が必要です。

ソフトの4S

ソフトの4Sは、スキル(Skill)、人材(Staff)、価値観(Shared Value)、スタイル(Style)を指します。これらは、組織の文化や「ヒト」に関する経営資源であり、より抽象的で測定が難しいものの、組織の成長と成功に深く関与しています。

スキル(Skill)

スキルは、組織内の従業員が持つ能力や専門知識を指します。組織が競争力を保つためには、従業員が必要なスキルを持ち、継続的に向上させることが重要です。必要なスキルが身に付いていれば、組織は変化に迅速に対応し、革新を推進することができます。

人材(Staff)

人材は、組織の従業員に関する要素で、採用、配置、育成、報酬などに関連しています。適切な人材の確保と育成は、組織の成功に不可欠です。組織は、従業員の満足度とエンゲージメントを高め、優れた人材を引き付け、維持するための戦略を持つ必要があります。

価値観(Shared Value)

価値観は、組織全体で共有されるビジョンや存在意義のことです。これらは、組織のアイデンティティーを形成し、従業員の行動や意思決定に影響を与えます。共通の価値観を持つことで、組織全体の方向性を統一することに役立ちます。

スタイル(Style)

スタイルは、組織風土や社風を指します。組織風土は、組織の雰囲気や文化に大きな影響を与えます。例えば、オープンで協力的な組織風土では、イノベーションを促進し、従業員の参加を奨励します。一方で、厳格でトップダウンの組織風土では、効率的な決定と実行を重視するという特徴があります。

8.弊社が推奨する組織マネジメントのフレームワーク

フレームワークはさまざまありますが、論点や手法が異なるため、活用する際には、注意が必要です。組織マネジメントを効果的に進めるために、弊社では、以下2つのフレームワークを活用しています。

スターモデル(ジェイ・R・ガルブレイス)

スターモデルは、アメリカの国際マネジメント開発研究所の教授でもあるジェイ・R・ガルブレイスが開発したフレームワークです。

戦略を起点とし、戦略実現のために経営管理職が意図的にマネジメントすべき要素を5つ提示しています。その要素は「組織能力・業務プロセス」「主要構造・横断構造」「マネジメントプロセス」「報酬」「人材」です。

それぞれの要素が互いにどのように影響し合うかを考慮し、全体としてうまく機能するように各要素のデザインを見直し変えていくことで、人々の言動に影響を与え、組織文化が変わりパフォーマンスにつながるとしています(図2)。

図2 スターモデル(2023年11月3日クリス・ウォーリー博士勉強会資料より弊社が解釈を加え作成) 

組織の合致性モデル(マイケル・L・タッシュマン)

合致性モデルは、ハーバード・ビジネススクールのマイケル・L・タッシュマン教授が開発したフレームワークです(図3)。

組織の合致性モデルの図

図3 組織の合致性モデル
参照:マイケル・L・タッシュマン チャールズ・A・オーライリー3世 WINNING THROUCH INNOVATION(競争優位のイノベーション 1997年 ダイヤモンド社)

このモデルでは、組織を「インプット」「組織活動」「アプトプット」で捉えます。インプットは「経営リーダーシップ」「戦略」の2要素、組織活動は「重要課題」「人材」「組織文化」「公式な組織の取り決め」の4つの要素があります。各要素の内容も重要ですが、これらが互いに整合性を保ち機能することで、「アウトプット」が高まると説いています。

整合性が欠けると、組織マネジメントに問題が生じるため、どの組織活動に焦点を当てて改革を進めるべきかが明確になります。

変化の激しい現代において、このフレームワークを活用することで、迅速かつ的確な組織マネジメントが可能となります。

9.管理職に必要な組織マネジメント能力

組織マネジメントを行うには、さまざまな能力が必要になります。ここでは、一般的に管理職に求められる主な能力を5つ説明します。

コミュニケーション力

管理職には高度なコミュニケーション能力が求められます。管理職は、上司である経営層と部下である現場担当者の間で情報をつなぐ「ハブ」としての役割を担っています。

経営層は、売り上げや利益といった経済合理性を重視しています。管理職はその戦略を現場に伝達しつつ、現場の状況を正確にフィードバックし、経営層と円滑な連携を図る必要があります。

さらに、管理職は部下との信頼関係を築くために、働きやすい職場環境を整えることも求められます。現場担当者の声に耳を傾け、何でも話し合える環境をつくることで、業務効率の向上を目指します。

こうした「ハブ」としての役割を果たすため、管理職には部下および経営層とのコミュニケーション能力が欠かせません。

人材マネジメント力

人材マネジメントとは、企業が目指す経営戦略を実現するため、戦略的に人材を配置し、従業員一人一人の潜在能力を最大限に引き出すことです。管理職は、部下の能力を最大化し、生産性や成果を向上させるための能力が求められます。

部下の個性や性格を見極め、適材適所に配置するだけでなく、必要に応じて動機づけや指導も行います。単に口頭で指示を出すだけでなく、管理職自身が手本を示すことも重要です。自身の行動が部下の士気を高め、自発的な行動を促すことにつながります。

また、評価体制やキャリアプランなど、中長期的な視点で人材の能力を引き出す施策も、人材マネジメントを行う上で、非常に重要です。

目標設定力

目標設定力とは、組織が達成すべき目標を適切に設定し、それに基づいて計画立案や最適な人員配置を行う能力を指します。あまりにも現実離れした目標設定は、部下のモチベーションを下げてしまう恐れがあるため、人員配置などの組織状況を鑑みた上で、努力すれば達成できる目標を設定することが有効です。

また、実際の進捗に応じて計画や目標を柔軟に見直す力も重要です。適切な目標を設定することで、組織は将来に向けた方向性を確認しながら成長を続けることができます。

計画遂行力

管理職は、目標達成までのプロセスを分け、逆算することができる計画力と、それを遂行する力が必要です。達成に向けて行動するためには、目標を立てるだけではなく、人を動かして仕組みをつくる力が求められます。全員が同じ方向を向いて取り組み、個人の頑張りが相乗効果を生む環境を整えることが重要です。

計画を立てる際は、目標達成のためのプロセスを分けて、各担当者の業務レベルにまで落とし込む必要があります。部下が迷わず業務に取り組める環境を整えるだけでなく、計画通りに進んでいない部下へのフォローも適宜行うことが求められます。

さらに、計画を遂行するためには、PDCAサイクルの管理が必須です。組織目標の達成には、計画力や遂行力を駆使してこのサイクルを回すことが重要です。同時に従業員の貢献意欲を引き出し、目標を達成するために、全員が同じ目的を共有することが必要です。

リスク管理力

組織のマネジメントを担う管理職は、社内環境だけでなく、取引先との契約条件や市場環境など社外の変化にも敏感でなければなりません。ビジネスの世界では、市場環境や取引先との条件など、日々の変化に対応する力が求められます。特にリスクの分類優先順位の設定が重要です。具体的には、発生確率と被害の大きさに応じてリスクを分類し、優先度の高いものから対応策を講じることです。

リスク管理力を高めることは、企業の損失を防ぎ、持続的な成長を実現するために不可欠です。潜在的な問題を早期に発見し、適切な対策を講じることが、組織全体の安定性に寄与します。

10.現代の組織マネジメントを実現する4つのポイント

前述したように、企業や組織が環境の変化に対応していくためには、従来の組織マネジメントを見直し、現代の組織マネジメントを実践する必要があります。ここでは、現代の組織マネジメントにおいて重要なポイントを4つ解説します。

ミッションやビジョンの明確化

現代の組織マネジメントは、自己の在り方や、どのような組織やチームをつくりたいのか、仲間と共に何を実現したいのか、という思いから始まると言っても過言ではありません。組織として共通のビジョンを持ち、何を目指しているのかを明確にすることが重要です。そして、そのビジョンを明確にするためには、管理職が自身のビジョンやミッションをしっかりと持ち、期待されていることを理解し、世の中に貢献することが求められます。

その上で、自組織のミッションやビジョンに基づいて経営計画を立て、その目標を部下と共有していくことが、組織を牽引する力を高めるために不可欠です。経営の目的や中長期的なビジョンを打ち出すことが、組織を導く力となるでしょう。

心理的安全性の確保

環境変化が著しい現代の組織マネジメントを実現する上で、より本音に近い対話を目指すことは重要であり、そのためには「心理的安全性」の確保が不可欠です。心理的安全性が確保された組織では、地位や経験にかかわらず率直に意見を述べることができ、活発なアイデアが飛び交います。

特に心理的安全性を確保し目標達成に向けた影響力を十分に発揮するには、管理職と部下との間に信頼関係を築くことが重要です。

また、部下が持つ多様な価値観や能力を生かすには「指示や命令のマネジメント」ではなく、強みを引き出し「協働や創発のマネジメント」が求められます。その基盤となるのが「心理的安全性」です。そうすることで、部下との信頼が深まり、強固な組織が形成されます。

部下の価値観やコミュニケーションスタイルは一様ではないため、相手に応じた柔軟な対応が求められます。普段から積極的にコミュニケーションを取り、定期的なミーティングや1on1の対話を通じて相互理解を深めることが大切です。

部下同士のコミュニケーションの活性化

リモートワークやフレックスタイムの普及により、物理的な距離があっても強力なコミュニケーションを維持することが不可欠です。定期的なミーティングフィードバックの場を設けること、チャットツールやプロジェクト管理ツールを活用してリアルタイムで情報を共有することが大切です。

また、非公式なコミュニケーションの場を設けることで、部下同士の親睦が深まり、結束力が高まるでしょう。

組織マネジメントとは?フレームワークや理論、能力、実施ポイント

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適切な影響力の行使

ミッションやビジョンがチーム内で共有されると、部下はそのビジョンに向けて活動します。管理職は、現代のマネジメントを遂行しながらも、時には従来のマネジメントを遂行することもあります。

また、目標の達成のためにさまざまな影響力を発揮する場面も出てきます。管理職が影響力を適切に行使するには、信頼が不可欠です。信頼がなければ、部下から反発されたり、チーム崩壊を招いたりする可能性もあります。そのため、影響力の行使の際は、組織への影響を慎重に考えた上で、部下の心理状態や信頼関係を重視し、適切なコミュニケーションを図ることが求められます。

11.まとめ

本記事では、組織マネジメントの基本的な概念から、主要な理論フレームワーク、現代の組織マネジメントを実現するポイントなどについて解説しました。
組織マネジメントは、組織の成功と持続的な成長を支える重要な要素です。円滑に組織マネジメントをしていくには、組織のビジョンやミッションを明確にし、自組織に合ったフレームワークを活用することが有効です。また、コミュニケーションの活性化を図り、心理的安全性を確保することで、変化にも対応できる柔軟性を持つことができ、結果的に持続可能な成長を遂げることができるでしょう。本記事が少しでも皆さまのお役に立てますと幸いです。

レポート作成:㈱ビジネスコンサルタント 情報サイト事務局

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