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自律型人材育成を促進する「パーソナライズ学習」

時代が求める「自律型人材」。それは、どのような人材で、どのように育成すればよいのでしょうか。自律型人材の定義と育成のポイント、それを促進する具体的な取り組みについて、弊社が㈱LDcubeと共同開催したウェビナー内容をご紹介します。

*本ウェビナーレポートは、2023年5月25日に実施したウェビナーの内容をまとめたものです。

<登壇者情報>
株式会社ビジネスコンサルタント 兼 株式会社LDCube
推進プロモーター 川野辺 甲
マネジャー 脇 達也

*株式会社LDcube(HP:https://ldcube.jp/)は、株式会社ビジネスコンサルタントが行ってきた内製化支援、デジタルラーニングに特化してサービス展開する、株式会社ビジネスコンサルタントが100%出資する子会社です。

1.私たちが考える自律型人材


自律型人材にはさまざまな解釈があります。まず、私たちが定義する自律型人材は次の通りです。

自組織における自律型人材を定義する

自組織にとって必要な自律型人材とはどのような人材でしょうか。例えば、指示を待つのではなく、自分で問題を発見し何をすべきか考えられる人、能動的に業務を遂行できる人や、困難があってもくじけず乗り越え責任を全うする人などが考えられます。大切なことは、自組織における自律型人材を定義することです。定義することで、社員は組織から求められている姿が分かるようになり、自身を振り返って、軌道修正を図ることができるようになります。

一例として、弊社が考える自律型人材の定義をご紹介します(図1)。

私たちが考える「自律型人材」の図

図1 私たちが考える「自律型人材」

自律型人材という文字に使われているのは「自立」ではなく「自律」です。「自分で考え、自ら決断した結果には責任が伴う」ということをしっかり理解している人材を自律型人材と定めたいという思いが込められています。

2.自律型人材を育成するポイント


自律型人材について、多くの組織が持つ問題は、定義はしているが育成がうまくいかないというものです。ここからは自律型人材をどのように育成するのか、具体的にポイントをご案内します。

自律型人材を育成するためのパラダイムシフト

結論から言えば、自律型人材を育成するには、組織運営のパラダイムシフトが必要です。特に、多くの組織では「20世紀型組織」から「自己革新組織」へのシフトが必要だと考えます(図2)。

組織運営のパラダイムシフトの図
図2 組織運営のパラダイムシフト

出典・参考 エイミー・C・エドモンドソン「チームが機能するとはどういうことか」を基に株式会社ビジネスコンサルタントが作成

歴史ある企業の多くは、20世紀型組織で運営されていました。いわゆるピラミッド型の組織運営であり、「安定的な組織が良い組織である」根拠を基に、効率が生産性につながるという考え方でした。その組織が従業員に求めるのは、従順な子どものような姿勢です。

しかし、コロナ禍に突入し、このような考え方が通用しないことが顕在化してきました。パラダイムシフト後に求められる、自己革新組織の基本的な考え方は、自律・創発・協働です。その根底には、変化対応できる組織が良い組織だという考え方があります。そのような組織が従業員に求める姿勢は、前述のピラミッド型の従順な子どもではなく、主体性のある大人です。

自己革新組織には、自律した個人とリーダーによる多様性が発揮できる環境づくりが求められます。例えば、学習しているかどうかで評価される組織づくりです。これが多くの組織で自律型人材を必要とする背景の一つになります。併せて、今、自律型人材が必要とされる理由を社員の方に伝えていくことが重要です。

自己革新組織に必要な「自律、創発、協働」とは

ここからは、自己革新組織にシフトしていく上でキーワードとなる自律、創発、協働の定義と詳細についてご案内します(図3)。

自己革新組織(自律・創発・協働)の図
図3 自己革新組織(自律・創発・協働)

自律は、大きな方針をそのまま実行するのではなく、かみ砕いて自分で考え、解決行動が取れることです。創発は、変化する状況下で効果的な行動を起こす能力、アジリティーリーダーシップとも言えます。協働は、独立した人材と集団が共に関わって相乗効果を生み出す活動のことです。

パラダイムシフトに必要な組織、集団、個人へのアプローチ

自己革新組織に移り変わっていくためには、自律型人材を創出する、とうたう研修を行うだけでは不十分です。確かに「自律型人材の育成」がテーマであることを踏まえれば、組織として研修を行い、自主性の向上を個人に委ねるという考え方もあるかもしれません。

しかし、弊社のコンサルティング領域である組織開発の知見から、個人の振る舞いは組織という環境に影響されることが分かっています。そのため、個人の能力開発の環境を整えると同時に、周辺環境も整えることがマネジメントとして必要になります。組織レベル、集団レベル、個人レベルと三つの領域に同時にアプローチしていくことが効果的です(図4)。

自律型人材を育成する上でのポイントの図
図4 自律型人材を育成する上でのポイント

参考 エイミー・C・エドモンドソン「チームが機能するとはどういうことか」を基に株式会社ビジネスコンサルタントが作成

三つの領域へのアプローチをご案内します。

組織レベル

制度の仕組みに対するアプローチがあります。キャリア自律における方針/定義や求める人材像の見直し、評価制度の再設計、キャリアマップ、ルートの作成、人材ポートフォリオの作成です。そして、能力開発が自由にできる環境整備などが考えられます。

集団レベル

職場風土に関しては、心理的に安全な職場風土をつくる、言い換えれば、皆が自分らしくいられる場所をつくることが重要です。そのためには、職場風土に影響を与えている管理職、マネジメントのアップデートが必要です。

個人レベル

将来的なキャリアについての考えを追求する、キャリア自律の実現が大切です。また一人一人の意識付けが重要になります。キャリアを具体的にイメージできれば足りないスキルを自ら磨き、成長につなげていくという自律型学習が加速していきます。そのための仕組みやさまざまなプログラムをどのように設計するのかが重要です。

自律型人材育成に着手するにあたって

組織レベルの取り組みができると、全体最適の活動となりやすく効果も見込めます。しかし、いきなり組織レベルから取り組むのが難しい場合もあります。そのような場合、無理せず集団レベルや個人レベルのアプローチから進めるとよいでしょう。

集団レベルにおいては、心理的安全性の高い職場風土を醸成するために、管理職のマネジメントをアップデートすることが大切です。また、個人レベルであればキャリア研修を実施し、個々人のキャリア意識、キャリア・アダプタビリティを向上させる自律型学習を促進する仕組みを導入することも重要です。

集団レベル|心理的に安全な職場風土をつくる

集団レベルで、自律型人材を育成するポイントをご案内します。有名な話ですが、エイミー・エドモンドソン博士(以下:エドモンドソン博士)(※1)は「心理的安全性の定義」は、チームメンバーがお互いを信じていると実感できる状態であると提唱しています。そして、心理的安全な職場風土をつくるために三つの取り組みが効果的であることを述べています(図5)。

※1 心理的安全性の第一人者であるハーバード・ビジネススクール教授

自律型人材を育成するポイント|集団レベルの図
図5 自律型人材を育成するポイント|集団レベル

土台づくり

行動科学という観点から、職場風土をつくることに影響を与えているのは、マネジャーの言動、マネジメントの在り方、マネジメントスタイルなどであると言われています。実際、マネジャーが職場にマイナスの影響を与えると、メンバーが意見を言わなくなるといったことも起こり得ます。そのためマネジャーの言動をどのようにアップデートするかが重要です。

参加促進

意見を言える場の設定と質問、そして傾聴です。エドモンドソン博士がペンシルベニア大学の教授と共に、北米にある23の病院内集中治療室(ICU)を対象に調査を行いました。医長が包括的リーダーの役割を担い、日常的に職員のアイデアを積極的に質問し、引き出しているICUでは、医師、看護師、療法士の心理的安全性が高く、他のICUに比べて患者の死亡率が18%改善されたそうです。このことからも、意見を言える場の設定、質問し参加を促進することは非常に大事だと分かります。

生産的な対応

生産的な対応、ポジティブで前向きな対応も大切です。ある企業では、上司が部下に対して「なぜできないのか」と聞くのではなく「できない要因は何ですか」と聞くようにしているのだそうです。Whyではなく、Whatで聞く。なぜできないのかという聞き方をすると、怒りや不満が無意識に相手に伝わってしまい、相手は言い訳をすることが多いと言われています。できない要因は何かと聞くと、ポジティブな発言が返ってくるとエドモンドソン博士は述べています。

個人レベルで自律型人材を育成する二つの考え方についてもご案内していきます。

個人レベル|その①キャリア・アダプタビリティという考え方

キャリア自律の基本となる考え方の図
図6 キャリア自律の基本となる考え方

キャリア・アダプタビリティとは、キャリア研究の第一人者である米国の研究者ドナルド・E・スーパーが提唱し、その後米国のキャリア理論家マーク・L・サビカスが体系化した理論です。

多様な役割を担う職業人が、その役割を果たして職業生活に成功と満足を得るためには、絶えず変化する社会環境への適応が求められるというものです。キャリア・アダプタビリティには、関心、統制、好奇心、自信の「四つの基本要素」があります。

まず重要となる要素は、キャリアへの関心です。自分のキャリアを構築するのは自分であり、自分の選択の結果が現状の姿なのだと自覚すること。そして、この先のキャリアも自分でコントロールができ自分でつかみ取るという認識を持つことが大切です。さまざまな職業に対する探究心を持ち、好奇心を発揮して自部署以外の人や異業種、他業界の人と交流することが自分の可能性を広げます。

そして、自らの願望を実現する自信を持つこと。自信を持つことは、難しいかもしれませんが、大事なのは、ありのままの自分を受け入れ大切に思うことで、自尊心や自負心を高め、醸成していくことができます。

個人レベル|その②人材育成方法のパラダイムシフト

もう一つは、自律型学習の実現です。人材育成の方法にもパラダイムシフトが必要になります(図7)。

自律型学習実現の前提の図
図7 自律型学習実現の前提

例えば、管理型教育から個々のニーズに合った教育、すなわちプッシュ型からプル型への転換が必要です。また、階層別研修から手上げ式研修へとシフトもその一つで、すでに多くの企業で実践されています。お客さまからも「手上げ式研修を増やした」、あるいは「集合研修だけでなく3時間ぐらいのウェビナーも増やした」というお話をよく聞きます。

集合研修ではなく、仕事の中で学習するという教育への移行も必要です。必要なスキルを適時に習得し実践するサイクルを形成します。例えば、クロージングが苦手な営業が、スマホ学習でポイントを押さえ、成果を上げた事例があります。これは必要なときに必要なものを学ぶ成功事例と言えます。

パーソナライズされた教育は、内容が自分に合うため、学びが自然に深まり成果も上がりやすくなります。自律的な学習文化の醸成も可能になります。

3.自律型人材育成を促進するCK-Connectとは

ここでは、自律型人材育成の実現に向けた課題と、課題解決のため弊社がご提案する「CK- Connect(シーケーコネクト)」と具体的なパーソナライズ学習のソリューションについてご紹介します。

自律型人材育成の実現をするための七つの課題

実際に自律型人材を育成する上で、研修などの取り組みを行うに当たっては、これまで述べてきたことも含め、さまざまな課題があり七つにまとめています(図8)。

七つの課題の図
図8 七つの課題

図8の七つの課題の中で、特に、③~⑦が重要です。これまでの人材育成プログラムを単にオンライン化するのではありません。目的を見据えた再構築、目的に合ったシステムの活用、育成を促進する仕組み、育成を支える職場風土、そして運用体制の充実化がポイントです。取り組みを一過性で終わらせず、継続的に行うためのヒントとなるソリューションをご案内します。

CK-Connectとは

これまでは、eラーニングのコンテンツを数多く用意したとしても、何を根拠にコンテンツを選択し受講するのかという点はあまり考慮されていなかったのではないでしょうか。個人に合わせたeラーニングコンテンツの提供を実現するソリューションが、CK-Connectです(図9)。

CK-Connectの特徴の図
図9 CK-Connectの特徴

簡単に仕組みをご案内します。始めに、10分間程度で約68問の質問に答えていただき、パーソナリティータイプ診断を行います。それによって、その人の強みや課題が分かり、それぞれのスキルに合わせたeラーニングのコンテンツが自動で配信される仕組みです。

パーソナライズ学習ソリューションの全体像

CK-Connectだけでも、パーソナライズ学習を進めることは可能ですが、これまで述べてきたように、職場へのアプローチも重要です。そこで職場で、自律型人材の育成を促進するために、自律型人材を育成するストーリーを持ったソリューションを開発しました(図10)。

実施ステップの全体像の図
図10 実施ステップの全体像

事前準備段階の最初のステップでアンケートを行い、上司向け説明会を経て、診断結果のレポートを職場全員が確認。実施段階では、このレポートを基に上司と部下で1on1ミーティングをしていただき、職場での対話の後、診断から実際に推奨されるコースを自分で学習するという流れです。

4.まとめ

自律型人材の育成を促進するためには、自組織で自律型人材の定義を行うことが最初のステップです。重要なのは「組織運営のパラダイムシフト」とご紹介したように、組織として、自律型人材が必要な背景や意味合いを社員に伝えていくことです。

そして、個人の行動は周囲の環境に大きく影響することが分かっています。そのため、育成の施策に関しては、組織、集団、個人と三つの領域にアプローチしていくことがポイントです。比較的着手しやすい、集団レベル、個人レベルにフォーカスするのもよいでしょう。集団においては、職場の心理的安全性を確保することが、より効果的な育成につながります。併せて、個人レベルの施策では、学習方法の点でテクノロジーの進化が追い風になっています。個々のニーズに合わせて学習内容を自動で提案するeラーニング「CK-Connect」を活用して、自律型学習プログラムを設計することも効果的です。本レポートが、今後、貴組織の自律型人材を育成する一助となれば幸いです。

レポート作成:株式会社ビジネスコンサルタント 情報提供サイト事務局

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