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MBO、OKR、KPI、KGIの違いとは?目標管理手法を解説

MBO、OKR、KPI、KGIは組織の目標を管理する上で重要な役割を果たします。しかし、似たような用語で具体的によく分からない、という方もいるのではないでしょうか。目標管理手法としてのMBOとOKRは、それぞれ異なる特徴を持ち、指標を指し示すKPIやKGIは密接した関係ですが意味は異なります。目標管理を効果的に運用するためには、これらの違いを理解する必要があります。本記事では、それぞれの違い目標管理のメリットやデメリット、活用方法について説明します。

1.目標管理とは

目標管理は、組織の目標と個人の目標を連携させることで、全体の効率性と成果を高める管理手法です。目標管理を通じて、個々の社員やチームが組織にどのように貢献していくかを計画し、組織全体の目標達成につなげます(図1)。

目標管理とは
図1 目標管理とは

目標管理は、PDCのサイクルで表現されます。評価期間を設け、PDCを回して運用します。

2.MBO、OKR、KPI、KGIの意味とは

混同されやすい「MBO」「OKR」「KPI」「KGI」は、全て目標管理に関する用語です。各用語の意味を解説します。

MBO

MBOは”Management by Objectives”の頭文字をとっており、「目標による管理」と訳されます。1954年にピーター・ドラッカーによって提唱されました。MBOの核心は、組織と社員が目標を連鎖させ、その達成に向けて定期的なフィードバックと結果の評価を行うことです。このプロセスを通じて、社員は自らの目標達成が直接的に組織の目標達成に貢献していると実感し、組織全員が目標に向かって努力することができます。

目標管理(MBO)とは?目的やメリット、運用方法、注意点を解説!
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OKR

OKRは”Objectives and Key Results”の頭文字をとっており、目標(Objectives)と、主要な成果(Key Results)という意味です。Googleなどの企業で広く採用されている目標管理手法です。企業、部門、チーム、個人、それぞれに挑戦的な目標を設定し、それに対する定量的な成果を重視します。OKRは通常四半期ごとに更新し、組織の柔軟性と迅速な対応を可能にします。高い頻度で、目標設定、進捗管理、評価の改善や調整をするため、変化の激しい現代にも対応することができます。

KPI

KPIは”Key Performance Indicators”の頭文字をとっており、「重要業績評価指標」と呼ばれます。組織の最終目的にどの程度目標達成に近づいているかを測るために用いられる指標です。KPIは具体的で測定可能な目標を定め、それに基づいて個人やチームのパフォーマンスを評価します。これにより、組織は目標達成の進捗状況を常に把握し、戦略を必要に応じて修正することができます。

KGI

KGIは”Key Goal Indicators”の頭文字をとっており、「重要目標指標」と呼ばれます。組織の最終的な成果や成功を表す指標です。KGIは組織全体の目標に直結しており、その達成状況を示します。しばしばKPIと混同されがちですが、KGIはより広範な成功を測るために設定され、KPIはその達成過程を管理するために用いられます。

3.MBOとOKRの違いとは

MBOとOKRは、組織と個人の目標を管理する手法として広く採用されています。ここでは、MBOとOKRの主な違いを解説します(図2)。

MBOOKR
目標の考え方実現可能な目標大きく挑戦的な目標
主な共有の範囲個人と上司全社
フィードバックと評価直接的に評価と昇進にリンク
半期~1年ごと
評価に直接リンクすることは少ない
四半期ごと
適している組織文化安定した組織文化革新的で柔軟性のある組織文化
図2 MBOとOKRの比較

目標の考え方

MBO

MBOにおける目標は比較的保守的で、達成可能性が高いことが望まれます。これは、実現可能な目標を通じて社員のモチベーションを保ち、確実な成果を積み重ねることを目指しているためです。

OKR

OKRの目標は非常に大きく挑戦的なため、月に届くほど大きいという意味の「ムーンショット」とも表現されることがあります。完全達成が難しい目標も多く、70%程度の達成率でも成功と見なされることが一般的です。これにより目標を高く設定することで、社員の挑戦しようとする意欲やモチベーションが高まります。

主な共有の範囲

MBO

MBOは、個人の目標を上司と部下で共有し、定期的に進捗を確認しながら目標達成を目指します。

OKR

OKRは通常、全社にわたって公開され、誰でも他の部門や個人のOKRを確認できるようにします。これにより、組織全体の目標に対する透明性が高まり、相互の理解と協力が促進されます。

フィードバックと評価

MBO

MBOでは、目標達成のプロセスにおいて定期的なフィードバックが行われ、評価に活用されることが多いです。個人のパフォーマンスが直接的に評価と昇進にリンクするため、社員は個々の目標達成に注力する傾向があります。

OKR

OKRでは、フィードバックが頻繁に行われ、四半期ごとのサイクルで目標の見直しを行います。OKRは社員の評価に直接リンクすることは少なく、チームや組織全体の進捗と調整に焦点を当てています。

適している組織文化

MBO

MBOは安定した組織文化に適しています。社員の責任と自主性を重視しつつ、個々の成長と組織目標の整合性を図ります。

OKR

OKRは変化が激しい環境に適しており、革新的で柔軟性のある組織文化を促進します。高い透明性と共有された目標により、全員が積極的にアイデアを出し合い、目標達成に貢献することが期待されます。

MBOとOKRの選択は、組織の目標、文化、必要とする柔軟性によって異なります。それぞれの手法が持つメリットとデメリットを理解し、組織の現状に最も適した手法を選択することが重要です。

4.MBOのメリットとデメリット

MBOは、多くの組織で採用されている目標管理手法です。この手法には、以下のような明確なメリットとデメリットがあります。

メリット

適切に運用された場合、以下のようなメリットがあります。

モチベーション向上

MBOによって設定された測定可能な目標は、社員の具体的な業務に結びついています。そのため、改善点を明確にしやすく、自主性も高まります。これにより、自分で決めた目標を達成し、それが評価されたと感じることや、組織に貢献し認められたと感じることができます。

自己管理力の向上

MBOは社員が明確な目標を設定し、その達成に向けて具体的な計画を立てます。この過程で、社員は自分の強みや弱みを認識し、どのように改善すべきかを考える機会が増えます。これにより、自己評価能力が向上し、自己成長につながります。

評価の透明性

目標達成度に基づいてパフォーマンスを評価することで、評価が主観的な判断に依存しにくくなります。具体的な数値や達成度を基に評価を行うことで、評価の公平性と一貫性が確保されます。この結果、社員は評価結果に納得しやすくなり、不公平感を覚えることが少なくなります。

デメリット

以下のようなデメリットにつながりやすいとされます。

長期ビジョンを見逃してしまう

MBOはしばしば短期的な成果が重視されがちです。これにより、社員や組織は長期的なビジョンや持続可能な成長戦略を見落とすことがあります。短期目標に集中するあまり、将来の機会や発展に必要な投資や取り組みがおざなりにされることがあります。

チームワークの悪化

MBOは個々の目標達成に焦点を当てるため、社員間や部門間での協力よりも競争が促進されてしまうことがあります。過度な競争心は、チームワークや組織全体の協調を損ない、職場の雰囲気や文化にネガティブな影響を与えることがあります。

管理職の負担の増加

目標管理プロセスの設定や評価には、多くの時間と労力が必要です。特に大規模な組織では、これらのプロセスを管理することが非常に複雑であり、高いコストがかかることがあります。これには目標設定や評価を行うためのトレーニングやシステムの維持管理も含まれます。

5.MBO成功のポイント

MBOは、組織の成功に不可欠な要素です。適切な目標設定とその達成に向けた効果的な管理は、社員のモチベーションを高め、組織全体のパフォーマンスを向上させます。ただし、MBOは人の仕事に評点を付け、給与や昇進に関わるため、その仕組みと運用は非常にデリケートです。ここでは、目標管理を成功させるためのポイントについて紹介します。

SMART目標設定

ビジネスや個人の目標設定において、SMART目標は非常に有効なフレームワークです。SMARTは、Specific(具体的な)、Measurable(測定可能な)、Aligned(連携した)、Realistic(現実的な)、Time-bound(期限を定めた)の頭文字を取ったもので、目標達成の成功率を高めるための基準を示しています。五つそれぞれの要素について詳しく解説し、どのように活用するかを説明します。

SMARTの法則とは

SMARTの法則は、目標を効果的に設定するための方法です。1981年に米国のコンサルタントであるジョージ・T・ドラン博士が「Academy of Management Review」に掲載された論文『There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and objectives』で初めて提唱しました。

その後、SMARTの法則は多くの研究者や実践者によって発展、拡張され、多くのバリエーションがあります。以下に、ミシガン大学ポジティブ組織研究センター創設者の一人であるキム・キャメロン教授の提唱するSMARTの法則を紹介します。

出典:「Practicing Positive Leadership Tools and Techniques That create extraordinary results」(2013年)Berrett-Koehler Publisher,Inc.  Kim S. Cameron

Specific(具体的な)

具体的な目標は、明確なパフォーマンス基準を提供します。具体的な目標は正確で、詳細で、明示的です。これは目標よりも達成できる可能性が高くなります。例えば、「私たちの目標はお客さまに満足していただくことです」ではなく「私たちの目標は95%の顧客満足の達成です」などとします。

Measurable(測定可能な)

測定可能な目標は、明確に評価し定量化することができます。測定可能な目標を設定すると達成の可能性が高まります。例えば、「私たちの目標は成功したシーズンにすることです」ではなく「私たちの目標は今シーズンに80勝をあげることです」などとします。

Aligned(連携した)

目標は組織の目標と連携させ、一貫させます。組織が関心を持っていることとほとんど関係ない目標に比べて、組織の目標と連携した目標は組織内の人から支援を得られるため達成しやすくなります。また個人の基本的価値観とも連携、一貫させることで物事を前に進めやすくなります。例えば、「私たちの目標は地域貢献の時間を取ることです」ではなく「週のうち4時間を学習支援活動に割り当てます」などとします。

Realistic(現実的な)

目標は現実的でありながらも、達成には困難なものでなければなりません、つまり少し高めに設定します。しかし不可能であってもいけません。現実的な目標は単なる空想や夢ではなく達成可能なものです。例えば、「私たちの夢はデロイトから貧困を撲滅すること」ではなく「私たちの目標は6カ月以内に最低でも1回食料支援イベントを実行することです」などとします。

Time-bound(期限が定めた)

期限を定めた目標が、いつまでに達成されることになるのかを特定します。例えば、「私たちの目標は早期に収益を1億円にする」ではなく「私たちの目標は会計年度までに1億の収益を上げることです」などとします。

MBO面談

MBO面談は、目標管理の一環として、上司と部下が目標設定や進捗確認、評価を行うための定期的な面談のことです。MBO面談を通じて、明確な目標の設定と進捗管理が行われ、組織全体のパフォーマンス向上を図ることができます。ここでは、MBO面談が目標管理において重要な理由とそのメリットをご紹介します。

目標の明確化と共有

評価期間の始まるタイミングで、上司と部下が具体的かつ達成可能な目標を設定します。これにより、部下は自身の役割と期待される成果を明確に理解でき、目標に向けての行動を具体化することができます。

進捗管理と調整

期中の定期的なMBO面談は、目標に対する進捗状況を確認し、必要な調整を行う機会となります。これにより、部下は自分の進捗を振り返り、必要に応じて上司のサポートを受けながら軌道修正を行うことができます。

成果の評価とフィードバック

期末のタイミングで、設定された目標に対する成果を評価し、フィードバックを行います。これにより、部下は自身の成果を客観的に評価されることで、モチベーションが向上し、次の目標に向けての意欲を高めることができます。

キャリア開発の支援

MBO面談は、部下のキャリア開発を支援する場でもあります。上司は部下の長期的なキャリア目標に対する助言や支援を提供し、部下の成長を促進することができます。これにより、部下は自身のキャリアビジョンを具体化し、組織内での成長を実現するための道筋を描くことができます。

MBO面談を通じて、組織全体が一体となって目標達成に向けて努力する文化を醸成し、個々のパフォーマンス向上と組織の成功を同時に達成することが可能です。

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1on1ミーティング

1on1ミーティングは、上司と部下一対一で行う、定期的な面談のことです。これにより、信頼関係の構築や部下のモチベーションの向上につなげることができます。MBO面談との違いは、目標設定やフィードバック、評価ではなく、サポートやコーチングが中心となることです。話題はそのときの困りごとなど、部下が決めます。1on1ミーティングが目標管理において重要な理由をご紹介します。

コミュニケーションの強化

1on1ミーティングは、上司と部下が直接コミュニケーションを取る機会です。ここでは、部下の日常の業務状況や感じている課題、成功体験などをリアルタイムで共有し、信頼関係を築くことができます。

部下のパフォーマンスの向上

定期的な1on1ミーティングを通じて、上司は部下の業務状況を把握し、必要なサポートやリソースを提供することができます。これにより、部下は自身のパフォーマンスを向上させ、業務を円滑に進めることができます。

部下のモチベーション向上

1on1ミーティングは、部下のモチベーションを高める機会でもあります。上司からの具体的なフィードバックや承認は、部下の自己効力感を高め、日々の業務に対する意欲を向上させます。

早期問題発見と解決

定期的な1on1ミーティングを通じて、部下が直面している問題や課題を早期に発見し、迅速に対策を講じることができます。これにより、業務上の障害を最小限に抑え、スムーズな業務進行を支援します。

1on1ミーティングを効果的に実施することで、部下のモチベーションとパフォーマンスを向上させ、目標管理の成功につなげることができます。状況を見てMBO面談と使い分けましょう。これにより、組織全体の目標達成がより現実的なものとなります。

6.まとめ

MBO、OKR、KPI、KGIはそれぞれ異なる概念です。MBOとOKRは目標管理手法のことです。MBOは個人と組織の目標の整合性を重視し、OKRは柔軟で野心的な目標設定を行います。KPIとKGIは指標のことです。KPIは進捗を評価するための具体的な業績指標で、KGIは最終的な成果指標を指します。これらを適切に活用することで、組織のパフォーマンス向上と目標達成が促進されます。目標管理手法を選択する際は、その特性を深く理解し、組織の文化や戦略、職種や業務に適合するかどうかを慎重に検討することが大切です。

レポート作成:㈱ビジネスコンサルタント 情報サイト事務局

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