チームマネジメントは、組織の成功に直結する重要な要素です。効果的なチームマネジメントにより、チームの生産性が向上し、従業員エンゲージメントも向上します。本記事では、マネジメントの基本概念から、チームマネジメントの主要素、目的、要点、必要なスキル、そしてスキルの向上方法までを詳しく解説します。
目次
1.マネジメントとは
チームマネジメントについてご紹介する前に、マネジメントの定義をご紹介します。マネジメントについては多くの定義がありますが、著名な経営学者であるピーター・ドラッカーは次のように述べています。
科学であり、技能でもある。そして、実務である。
ピーター・ドラッカー
組織に成果をあげさせるもの(道具・機能・機関)
仕事であり、その成否は結果で判断される。
また、「現代企業が抱えるさまざまな矛盾に対応(バランス)しながら、経営資源を適切に配分し、人と共に生産性を向上させる過程(プロセス)」とも言えます。リーダーはマネジメントの本質を理解しながらチームのマネジメントには何が大切かを学び、実践することが求められます。
2.チームマネジメントとは
チームマネジメントとは、組織やプロジェクトにおいて、チームが目標を達成するためにリーダーがリーダーシップを発揮し、メンバーを効果的にマネジメントすることを指します。チームマネジメントには多岐にわたるスキルが必要で、例えばコミュニケーション力、チームビルディング力などがあげられます。チームマネジメントが成功すると、チーム全体の生産性や成果につながります。
3.チームマネジメントの3つの主要素
チームマネジメントには、いくつかの重要な要素があります。これらの要素を明確にすることが、チームの成功につながります。ここではチームマネジメントの3つの要素をご紹介します(図1)。
①使命、成果
使命(ミッション)や成果は、チームの存在意義や最終的な目標を示します。ミッションはチームの方向性を決定し、全員の努力を一つにまとめるためのガイドラインとなります。どのような使命を持ち、誰に貢献するのかが明確であるほど、チームメンバーは自分たちの役割が理解しやすくなります。
②課題、業務
チームが直面する課題や日々の業務は、ミッションを達成するために具体的でなければなりません。また、課題や業務は、各メンバーの役割に応じて適切に割り当てることが求められます。リーダーは、メンバーがミッション達成に関係のない業務を行っていないかを確認し、業務の優先順位をつけることでチームの効率と成果に大きな影響を与えます。
③進め方
チームの進め方、つまりマネジメントプロセスとは、課題や業務を遂行するための構造や役割分担を考えることです。業務の進捗管理や、チームメンバーの対人関係が効果的に機能しているかを確認することが必要です。
4.チームマネジメントの目的とは
チームマネジメントの主な目的は、チームメンバーが主体的に協力し、最大限の成果を上げることです。ここでは、チームマネジメントの目的について詳しく説明します。
生産性向上
現代社会では、人口減少や働き方改革などの影響により、限られた資源や時間で成果を出すことが求められています。効果的なチームマネジメントにより、メンバーの役割分担や業務プロセスの最適化が図られ、時間とリソースの無駄を減少させることが可能です。
生産性向上のためには、まずメンバーのスキルや得意分野を把握し、それを最大限に活用することが必要です。また、定期的なフィードバックや評価を通じて、個々のパフォーマンスを向上させることも重要です。これにより、チーム全体のモチベーションも高まり、成果を最大化することができます。
多様な人材の強みを生かす
多様な人材のマネジメントは、現代のビジネス環境でますます重要になっています。多様な背景やスキルを持つメンバーが集まることで、創造的かつ革新的な解決策が生まれやすくなります。異なる視点やアイデアが交わり、新しいアプローチが見つかる一方で、適切なコミュニケーションとオープンな文化が必要です。リーダーはメンバーとの信頼関係を築き、全員が意見を表明しやすい環境をつくることが求められます。
従業員エンゲージメントの向上
エンゲージメントの高い従業員は、生産性が高く、離職率が低い傾向があります。そのため、チームマネジメントには、従業員エンゲージメントの向上が求められます。これを実現するためには、明確な目標設定と効果的なコミュニケーションが欠かせません。さらに、オープンなコミュニケーションと信頼関係の構築が、従業員のエンゲージメント向上につながります。
5.チームマネジメントの要点
ここでは、効果的なチームマネジメントの要点である「コンテントとプロセス」について解説します。
チームを運営する際には、コンテントと呼ばれる目に見えやすい部分だけに目を向けるのではなく、目に見えにくいプロセスと呼ばれるチームの雰囲気やコミュニケーション、メンバーの参画度合いや雰囲気などにも注意を払うことが大切です(図2)。
コンテントとプロセスは以下の意味合いで分類されています。
コンテント
コンテントとは「課題、テーマ、内容」などを指し、チームが何をしているのか、何について話し合っているのかを示します。
明確なチーム目標
チームマネジメントの第一歩は、目標の明確化です。目標が明確になることでチーム全体が同じ方向に努力することができます。目標を明確にするには、具体的で測定可能な指標を設定することが重要です。これにより、各メンバーは自分の成果責任と責任範囲を理解できます。
タスク管理
チームをマネジメントする上でタスク管理は重要です。業務の優先順位を正しくつけることで仕事の生産性を上げることができます。緊急度、重要度の軸で業務を整理するのも一つの方法です(図3)。
効果的な時間のかけ方は、A、B、C、Dの順です。A以上にBの仕事(課題)を意図的に行うことが大切です。
プロセス
プロセスは「参画度合、コミュニケーション、雰囲気」などを指し、チームが現在どのような状況にあるかを表します。
活発なコミュニケーション
活発なコミュニケーションは、チームマネジメントの要です。チーム内の円滑なコミュニケーションは、問題の早期発見と解決、信頼関係の構築、創造的なアイデアの創造につながります。リーダーはオープンなコミュニケーションを奨励し、メンバーが自由に意見を述べ、質問や提案ができる環境をつくる必要があります。
これにより、チーム全体のエンゲージメントが向上します。フィードバックの文化を育てることも重要で、建設的なフィードバックは個々の成長を促進し、チームのパフォーマンスを向上させます。
また、情報共有の仕組みを整えることも必要です。透明性の高いコミュニケーションにより、チーム内での情報のギャップをなくすことができます。そのためには定期的なミーティングの実施やデジタルツールの活用が役立ちます。例えば、プロジェクト管理ツールを使用するとタスクの進捗状況や重要な情報をリアルタイムで共有できます。
心理的安全性
心理的安全性は、チームマネジメントに欠かせない要素です。心理的安全性が確保された環境では、メンバーが失敗を恐れずに意見を述べたり、新しいアイデアを提案したりすることができます。
まず、心理的安全性を高めるためには、リーダーが模範を示すことが重要です。リーダーが率直に意見を述べ、失敗を認める姿勢を示すことで、メンバーも安心して自分の意見を述べることができます。その際リーダーはメンバーの意見を尊重し、批判的な反応を避けるよう心掛ける必要があります。これにより、オープンなコミュニケーションが促進され、チームの創造性が向上します。
以上の要点を踏まえて、効果的なチームマネジメントを実践することで、チーム全体のパフォーマンスを最大化し、組織の目標達成に貢献することが可能です。
6.チームマネジメントに求められるスキル
チームマネジメントには、さまざまなスキルが求められます。リーダーはこれらのこれらのスキルを習得し、実践することで、効果的なチームを構築し、目標を達成することができます。以下に、チームマネジメントに求められる力について具体的に説明します。
目標設定力
目標設定力は、チームを成功へ導くための基本的なスキルです。リーダーは、チームの目標を明確にし、具体的かつ達成可能なタスクに分解する能力が求められます。
まず、目標を設定する際にはSMARTの法則(Specific:具体的な/Measurable:測定可能な/Achievable:連携した/Relevant:現実的な/Time-bound:期限を定めた)の活用が効果的です。これにより、目標が具体的で測定可能なものとなり、チームメンバーが達成に向けて努力しやすくなります。
コミュニケーション力
コミュニケーションの語源はラテン語の「コミュニス(COMMUNIS)」です。英語では「パブリック(PUBLIC)」や「シェア(SHARE)」と同義で「分かち合う」や「共有し合う」という意味です。
コミュニケーションは、お互いが発信者であり受信者です。話し手が発信することだけを目的にせず、相手が受信できるように話す必要があります。マネジメントを行う際には、自分が発信することだけに重きを置かず、相手の話を傾聴し、言葉のキャッチボールをすることが大切です(図4)。
チームビルディング力
チームビルディング力は、効果的なチームを作り、維持するためのスキルです。個々のスキルや知識を結集し、協力することで大きな成果が得られます。チームは目標、役割、手順、対人関係の質で成り立ちます。これらの要素を理解し、活用することで、チームのパフォーマンスを向上させることができます(図5)。
目的・目標
チームの目標は、そのチームが達成しようとする具体的な成果や目的を指します。目標は明確で測定可能であるべきです。これにより、チームメンバー全員が同じ方向を向き、活動することができます。目標設定はチームのモチベーションを高め、達成感を共有するために不可欠です。
役割
チームメンバー同士の相互の期待、他部門、お客さま、上司からの期待を基に役割を設定することで、業務内容や、責任の所在も明確になり、円滑なチーム運営が可能となります。
手順
チームが目標を達成するためには、具体的な手順を踏むことが必要です。手順には計画の立案、進捗の管理、課題の解決方法などが含まれます。明確な手順を設けることで、チームが目標にむかって合理的に作業を進めることができます。
対人関係の質
チーム活動の全ての土台となるもので、メンバー間のコミュニケーションや信頼関係を指します。対人関係が良好であれば、メンバーは意見交換やフィードバックを積極的に行い、お互いをサポートしやすくなります。これにより、問題解決能力が向上し、チーム全体の士気が高まります。
各要素がどのように機能するかを理解することで、より効果的なチームづくりを実現することができます。
問題発見、解決力
チームが直面する課題や障害を迅速かつ効果的に解決するためのスキルです。リーダーは、問題を的確に分析し、最適な解決策を見つけ出す役割を担います。まずは、問題発見、解決の現状のレベルをつかむことが大切です。以下の五つのレベルに基づいて、クリアすべきことを明確にするよう意識しましょう(図6)。
レベル1では問題を認識できていない状態です。レベルが上がるにつれて、問題の全体像を把握し、原因分析、包括的な解決策の提案ができるようになります。リーダーは、問題を体系的に捉え、効果的な解決策を実行し、持続的な改善を図るレベル5を目指すことが求められます。特に、レベル4以上の能力を持つことで、チーム全体の問題解決能力の向上に寄与することができます。
7.チームマネジメント力を高める方法
チームマネジメント力を向上させるためには、継続的な学習と実践が必要です。以下に、具体的な方法を紹介します。
社内研修(外部講師)
社内で行われる研修プログラムを通じて、マネジャーは必要なスキルや知識を習得することができます。社内研修の利点は、自社の文化やニーズに合わせた具体的なケーススタディーやシミュレーションを用いて、実践的なスキルを身に付けられることです。
加えて、外部講師による講義やワークショップを通じて、最新のマネジメント手法やトレンドを学ぶことができます。また、社内のマネジャー同士で経験や知識を共有でき、関係も強化され、普段の業務の問題解決につながります。
社内研修(社内講師)
社内講師による社内研修は、企業独自の研修プログラムを開発し、継続的に実施する方法です。研修の内製化とも言えます。メリットは外部講師の研修に比べてコストを抑えつつ、内容のカスタマイズでき、より実践的な学びが可能な点です。また、社内のリソースを活用して、長期的な視点で継続的な学習の機会を提供することができます。
外部研修(異業種交流)
外部研修や異業種交流は、新たな視点やアイデアを得るための有効な手段です。異なる業界や職種のリーダーと交流することで、自社にはない視点からフィードバックを受けることができ、自分の考え方やアプローチを見直す機会が得られます。
利害関係のない環境で行われるため、普段は試せない新しい行動を取りやすくなるという利点もあります。また、他業界のリーダーとネットワークを広げる機会にもなり、今後のビジネスにおいて有益な関係を築くことができます。
メンタリングとコーチング
経験豊富なリーダーからのメンタリングやコーチングを受けることで、実践的なアドバイスやフィードバックを得られます。これにより、具体的な課題解決のヒントやマネジメントスキルの向上が期待できます。
自己学習と振り返り
書籍やeラーニングを通じて自己学習を続けることも重要です。労務管理やハラスメントへの対応など、マネジメントにおいては知らないとできないことも数多くあります。また、価値観の多様性に対応するためには、自身の考え方や価値観を知る必要があります。定期的に自分のマネジメント観や手法を振り返り、改善点を見つけることで、継続的な成長を促進します。
8.まとめ
チームマネジメントは、組織の成功に欠かせません。チームマネジメントの主要素や、要点である「コンテントとプロセス」をしっかりと理解し、実践することが重要です。チームを効果的にマネジメントするには、目標設定力、コミュニケーション力、チームビルディング力、問題解決力といったスキルが、マネジャーに求められます。継続的な学習と実践を通じてマネジメントスキルを向上させることで、チームのパフォーマンスを最大化し、組織の目標達成に貢献することができるでしょう。
レポート作成:㈱ビジネスコンサルタント 情報サイト事務局